【メディア】静岡新聞 2016年5月28日

静岡新聞 2016年5月28日

ウイスキー蒸留器搬入

葵区落合 今秋の製造開始目指す

静岡市葵区落合に建設中のウイスキー蒸留所に、施設のシンボルとなるウイスキー蒸留器が搬入された。蒸留所は、同市清水区の洋酒輸入販売業「ガイアフロー」(中村大航社長)が、今秋のウイスキー製造開始を目指し整備を進めている。

長野県御代田町で1955年から2011年の間に稼働していたウイスキー蒸留所から麦芽の破砕機など再使用可能な設備数点を運び出したのが、昨年11月中旬。その後、製造元の工場などで整備を行い、今月中旬から建設中の建物内へと設置を始めた。

この日、群馬県高崎市から運び込まれたのはウイスキー製造用1基と老朽化のため展示用に転用された2基の蒸留器。クレーンを使い本体や付属部品を搬入した後、慎重に組み立てた。「国内で伝統のある蒸留器を自分の蒸留所で使用できるなんてうれしい。将来は原料を“オール静岡”にした特徴のあるウイスキーを造りたい」と中村社長は意欲をみせる。配管や内装などの工事が順調に進めば、7月末に蒸留所が完成するという。

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【メディア】SBSテレビ 2016年5月13日 イブアイしずおか

2016年5月13日 16:45〜
SBSテレビ  イブアイしずおか

特集 新緑の山里へ 玉川マップ

vc-2016-05-29-18h35m14s954 vc-2016-05-29-20h14m20s082原田さやかさん「玉川を紹介する、玉川マップをつくりました」
「玉川にいろんなお店や素敵な場所があるんですけれども」
「そういったところを詰め込んだマップになります」
vc-2016-05-29-18h36m18s385 vc-2016-05-29-18h37m14s938鈴木アナ「もうだいぶ建物も出来てきました」vc-2016-05-29-18h37m22s362vc-2016-05-29-19h24m58s574 vc-2016-05-29-19h05m53s880鈴木アナ「中村さんは精密機械工場を経営されていたんです」vc-2016-05-29-19h26m07s510鈴木アナ「こういう蒸留機で、ウイスキーの原料を蒸留するんですね」vc-2016-05-29-19h26m30s902中村「静岡らしい味わいをもったウイスキーをつくりたいと思っています」
「やわらかさと、まろやかさを持った味わいになると思います」vc-2016-05-29-19h27m36s450 vc-2016-05-29-19h27m52s520 vc-2016-05-29-19h28m17s899 vc-2016-05-29-19h28m46s166 vc-2016-05-29-19h29m32s108鈴木アナ「ウイスキーの原料は大麦ですね」
「実はその大麦が玉川で実っていたんです」vc-2016-05-29-19h30m02s169vc-2016-05-29-19h30m46s443 vc-2016-05-29-19h30m31s564vc-2016-05-29-19h29m22s507 vc-2016-05-29-19h30m56s015 vc-2016-05-29-19h33m37s871 vc-2016-05-29-19h33m52s533 vc-2016-05-29-19h34m12s767 vc-2016-05-29-19h34m26s045鈴木アナ「玉川の農家が協力して育てました」vc-2016-05-29-19h34m51s318中村「何も分からないところからスタートしています」
「なので、非常に苦労をしていますけれども、」
「こんなに立派に育ってくれたので、みんなで感激しています」vc-2016-05-29-19h35m50s450原田さやかさん「地元の大麦でつくるウイスキーですね?」vc-2016-05-29-19h37m02s102中村「地元の大麦でウイスキーをつくる」
「地元の人と一緒に飲む」
「これがやってみたいんですね」vc-2016-05-29-19h37m52s266原田さやかさん「うわ〜、贅沢〜! いいですね!」vc-2016-05-29-19h38m07s879 vc-2016-05-29-19h39m10s750

【メディア】アスタモリス代表バート氏のインタビューがウイスキー通信に掲載されました

2016年4月25日 ウイスキー通信 NO.32

編集長インタビュー
アスタモリスのバート・ブラネルさんに聞く

新進気鋭のボトラーズ
アスタモリスの魅力に迫る!

近年ウイスキーが静かな盛り上がりを見せているベルギーで、 2011年、新たなボトラーズが誕生した。創業者のバート・ブラネルさんが来日したのを機に、樽の選定や瓶詰め度数へのこだわり、さらには新たなジン造りへの想いを編集長が聞いた。

土屋:バートさんはベルギーご出身で、2011年に「アスタモリス」というボトラーズを設立されたんですよね。もとからウイスキーには関わっていたんですか?

バート:ウイスキーとの出会いは1994年、私が19歳の時です。以来22年にわたってウイスキーに携わってきましたが、実は、その歳までお酒は一切飲んだことがなかったんですよ。

土屋:そうなんですか!?ベルギーと言えばビールなのに(笑)。ベルギーでは何歳からお酒を飲めるんですか?

バート:16歳です。でも私は飲む必要性を感じなかったんです。ところがある時、バーで働いていたカルロスという友人に勧められ、閉店後に一杯のウイスキーを飲ませてもらったんです。その 瞬間、雷に打たれました。あまりのおいしさに(笑)。そこから彼とウイスキーを飲むようになって、1999年には一緒にアイラ島にも行きました。でも、当時ベルギーに入っていたアイラモルトはブルイックラディ、ボウモア、ラガヴーリンの3つだけだったので、それ以外に蒸留所があるなんてまったく知らなかったんです。だから実際に行ってびっくりしました。他にもこんなに魅力的なウ イスキーがいっぱいあるじゃないかと(笑)。 一週間の滞在で完全にウイスキーの虜になってしまい、帰国し てからカルロスと共に「The Wee Dram Whisky Society」というウイ スキークラブを立ち上げました。設立して2年後にはメンバーも 100人くらいになり、その頃から自分でもウイスキーの記事を書き始め、2006年からは「モルトマニアックス」の審査員に迎え入れられました。ただ、審査員でいるためには中立の立場でいないといけないため、自分のボトリング会社を始める時に辞めました。

土屋:それがアスタモリスですね。最初のボトリングは何を?

バート:記念すべき最初のボトリングはベンリアックです。まだ会社をつくる前、サンプリングをしている時にたまたまその樽に出会って、飲んだ瞬間に衝撃を受けました。それで決めたんです。「この樽が欲しい。この樽を詰めるためにボトリング会社を立ち 上げよう」とね。それがアスタモリスで最初にリリースしたベンリアック1975のカスクNo.7227でした。私の生まれた年でもあるので、余計に欲しかったんです。

土屋:ちなみにアスタモリスってどういう意味なんですか?

バート:フランダース地方の言葉遊びみたいなものです。私の住む地域の方言では一応意味があるんですが、大した意味じゃありません。この名前にした最大の理由は、どの言語の人にとっても 呼びやすく、覚えやすい名前だったからです。英語でもフランス 語でも日本語でも、間違いなく発音できます。

土屋:たしかにアスタモリスってすごく言いやすいですよね。

バート:実はスタッフに聞かれるまで、社名が決まっていないことをすっかり忘れていたんです(笑)。でも聞かれた瞬間、アスタモリスという名前がパッとひらめきました。

土屋:今までに何本くらいリリースしているんですか?

バート:40 ~ 45種類くらいです。

土屋:樽は蒸留所まで足を運んで探すんですか?

バート:最近は難しいので、蒸留所のオーナーと商談を設けたり、 あとはブローカーを通すこともあります。

土屋:いい樽を見つけるのは、本当に難しいですよね。

バート:そうなんです。しかも私は本当にいい樽でなければ買わないので、気難しい顧客だと思われています(笑)。割合的には、サンプルを36種類もらって、その中の1本をボトリングするかどうかという感じです。会社規模が大きくないからこそ、自分の好きなものをとことん追求することができるんだと思います。

わずか1%の差にこだわって瓶詰め度数を決定

土屋:ボトリングはシングルカスクのみということですが、アルコール度数はいかがですか?

バート:もちろんカスクストレングスで出すボトルもありますが、 私にとってボトル選びはとても個人的なもので、自分が飲みたいウイスキーを自分が一番おいしいと思う度数でボトリングするのが信条です。だからすべてのボトルをカスクストレングス、もしくは46%、43%などの決まった度数でボトリングすることはあまり意味がないと思っています。子供の個性が一人ひとり違うように、ウイスキーも一つとして同じものはありません。たとえば今回持ってきたグレンマレイは47%ですが、私は度数を決めるために独自の方法を取っています。グレンマレイはサンプルの段階で度数が56%でしたが、そこから1%刻みで度数を落としながらテイスティングしていきます。加水をしながら49、48、47と落として いき、46%を試した瞬間に「あ、落ち過ぎた」と思い、もう一度47 %に戻してみました。それで飲んでみるとしっくりきたので、この樽は47%がふさわしいと確信したんです。非常にマニアックな作業だと思われるかもしれませんが、それくらいの情熱を持って取り組むべきだと思っています。

土屋:すごいこだわりですね(笑)。ガイアフローが出しているボ トルは「東海道五十三次シリーズ」など、どれも日本をイメージしたラベルですね。

バート:表ラベルは世界共通で、裏ラベルに浮世絵が描かれているのは日本限定です。今度新しく発売するボトルのラベルにはカエルがあしらわれているんですが、このアイデアは「ウイスキーフェスティバル2015 in東京」に来て思いつきました。ガイアフローがアスタモリスのシンボルであるカエルを大きく看板に使っているのを見てひらめいたんです。

土屋:カエルはもともと会社のデザインには使われていたんですね?

バート:そうです。最初のデザインは何もないシンプルなものだったので、もっとインパクトのあるものが欲しいとデザイナーにリクエストしたんです。それで彼がカエルを付け加えてくれました。今ではとても気に入っています。

土屋:ウイスキーには色々なラベルがありますが、カエルって珍しいですよね。

バート:私も変わり者なのでピッタリです(笑)。デザイナーのデイビッドとはとても仲良しで、考え方が似ているので、彼が上げてくるデザインは見た瞬間に「いいね!」となります。

土屋:東海道五十三次をラベルに使うのは、いいところに目を付けたなと思います。これは日本橋から順番にボトリングしているんですか?

バート:日本橋と京都の三条大橋の両方から順番に付けています。

土屋:五十三次が全部揃うのはだいぶ先ですよね(笑)。

バート:ボトリングしたいのはやまやまなんですが、アスタモリスのクオリティに見合うものじゃないといけないので(笑)。

土屋:バートさんは今どちらにお住まいなんですか?

バート:ベルギーの北西部、フランスとの国境に近い小さな町です。

土屋:ウイスキーのビジネスを始める前は何をされていたんですか?

バート:冷凍野菜の卸売業でした。でも今の仕事のほうがずっと好きです。ウイスキーのおかげでたくさんの国を訪れることができましたし、たくさんのユニークな人たちに出会いました。日本を訪れるのも4回目ですが、すっかり恋に落ちてしまっています。 これほど美しい国はありません。私が18歳の頃は、ベルギーを訪れる日本人観光客がカメラ片手に写真を撮っている姿を見ておもしろがっていましたが、40歳になった今、私は日本を訪れるたび に街中の写真を撮りまくっています(笑)。

土屋:日本の食事はどうですか?

バート:すばらしいです。お箸も最初は使えませんでしたが、完璧にマスターしました。その国の人と一緒にビジネスをするためには、彼らのカルチャーをリスペクトすることが大切です。ちなみに今の大好物はいぶりがっこです。あれにクリームチーズと醤油をかけて食べるとバツグンです(笑)。

土屋:分かりました(笑)。

世界的にも珍しい、ウイスキーの空き樽で熟成させたジン

土屋:それでは今回お持ちいただいたジンについても教えてください。

バート:これは「NOG」というジンで、「No Ordinary Gin」(普通ではないジン)の略ですが、NOGにはオランダ語で「More」という意味もあります。色を見てもらえば分かるとおり、普通のジンは無色透明ですが、NOGは違います。アスタモリスをボトリングしたあとの空き樽で熟成をさせているんです。

土屋:なるほど。おもしろいですね。

バート:ジンを造り始めたのは2年前ですが、それまでジンに興味はありませんでした。でもある日、アスタモリスのボトルを見た男の人がふと、「ウイスキーのようにそのままニートで飲めるジンがあればいいのに」と言ったんです。ウイスキーは買って帰ってボトルを開ければすぐに飲めますが、ジンの場合は氷やレモネ ードを入れて、ハーブやビターズを加えて、ようやくおいしく飲むことができます。その男の言うことはもっともだと思い、10ヵ月後にはこのジンが誕生しました。熟成をさせていないタイプは 「魂」という名前で日本に輸出しています。魂も普通のジンとは一味違って、よりフルーティなんですが、それをさらに8ヵ月ほど樽熟成させたのがNOGなんです。熟成によって、ジンが劇的に変わることが証明されました。

土屋:ジンの蒸留設備は持っているんですか?

バート:持っていないので、ベルギー国内で4つの蒸留所と提携して造ってもらっています。ジュネーブからベルギー、オランダにかけては昔から蒸留業が盛んな地域で、いい技術を持った蒸留所がたくさんあるんです。

土屋:ボタニカルのレシピはバートさんが選んで?

バート:はい、私のオリジナルレシピです。

土屋:4つの蒸留所はどんなレシピにも対応してくれるんですか?

バート:そうです。そんなレシピでは造れないと断られたことは一度もありません。

土屋:ちなみにどんなレシピなんですか?

バート:メインのボタニカルはタンジェリン、カカオ、モルト、ジュニパー、コリアンダー、アニスシード、スターアニスなどです。NOGができあがった時、ベルギーの一流バーテンダーにテイスティングをしてもらったんです。ウイスキーに関しては経験もあって何がおいしいか分かっていたんですが、ジンに関してはまだ自信がなかったので。最初は彼も半信半疑だったんですが、味見をしたらいいジンを造ったなと言ってくれました。それでNOGのバッチ1は評判になり、あっという間に売り切れてしまいました。

土屋:バッチ1はモートラックの空き樽に詰めて熟成させたものですね。

バート:そうです。同じ樽で2度目の魔法がかかったわけです。私は樽こそがウイスキーにとって一番重要な原料だと思っています。最高のスピリッツを最高の樽に詰めて寝かせれば、最高のウイスキーができ上がります。でもいくらスピリッツが良くても、 悪い樽に入れてしまえば悪いウイスキーにしかなりません。樽によってすばらしいウイスキーが生まれるなら、同じ作用がジンにも起きると思ったんです。私が買う樽はすべて最高品質の樽です。だからその樽にジンを詰めれば、おいしくなるという確信があり ました。

土屋:それはすばらしいアイデアですね。シェリー樽も使ったことがあるんですか?

バート:最近オーヘントッシャン1991の樽を出したので、それにジンを詰める予定です。それが初めてのシェリーカスクになりますが、試してみてダメなら捨てます。自分が200%気に入ったものじゃないと、ボトリングしたくありませんからね。

土屋:それは楽しみですね。ここからは実際にジンをテイスティングしながらお話を聞きたいと思います。まずは熟成させていない「魂」のバッチ1から。いい香りがしますね。味もおいしいです。普通のジンよりもすごくソフトでフルーティ、そして丸みがある。

バート:熟成させたNOGは、もっとまろやかですよ。

土屋:なるほど。蒸留直後のジンはアルコール度数は何度くらいですか?

バート:60%です。

土屋:じゃあそれを46%まで加水したんですね。

バート:一般的なジンは38%ですが、そんなのはジュースと一緒でアルコールとは呼べませんよ(笑)。私は強いスピリッツが好きなんです。

土屋:熟成させたNOGはよりフルーティ、よりシトラスを感じますね。すごくタンジェリーが効いている。未熟成のものはまだジュニパーなどの香りがしますが、NOGになるとシトラスのすごくフレッシュな香りがする。樽熟成でこんなに変わるんですね。これはすごい、ちょっと驚きですね。では未熟成の「魂」バッチ2も 試してみましょう。これはレシピも違うんですか?

バート:ジュニパーを15%増量しただけであとは何も変えていません。でも仕上がりは結構違うものになっています。

土屋:よりスパイシーですね。しかし、バートさんのところのジンは非常におもしろい。こういうものが造れる環境にいること自体がすばらしいし、うらやましいですね。日本で同じことをやろうとしても、ジンの蒸留所はないですし、自分で決めたレシピどおりに蒸留してくれって頼むこともできない。そういう意味でも大変貴重なジンだと思います。今日はいろいろとおもしろいお話、ありがとうございました。

バート:こちらこそ、ありがとう ございました!

 

バート・ブラネルさん
2006 年よりモルト・マニアッ クスの審査員として活躍し、 2011 年にインディペンデント・ ボトラーとしてアスタモリスを設立。繊細でデリケートなウイスキーを好み、カスクの選定には定評がある。2013 年よりオリジナルレシピでジンのプロデュースも手掛ける。

 

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【メディア】静岡新聞 2016年5月8日

静岡新聞 2016年5月8日

麦秋

静岡・玉川地区 将来はウイスキーに

静岡市葵区の玉川地区で大麦の穂が黄金色に輝き始めた。大麦の収穫期を指す「麦秋」の景色が周辺の山々の新緑と美しいコントラストを見せている。

この大麦は、同区松野の建築資材業山本建材(山本雅也社長)が事業の一環として同区桂山で栽培している。広さ約1ヘクタールの田畑に二条大麦の種75キロをまいたのが昨年11月。3月初旬には、ひげの生えた特徴的な穂が姿を見せ始めた。「初めての栽培で何も分からず試行錯誤した」と山本社長。収穫は今月下旬になりそうという。

収穫された大麦は、同地区でウイスキー製造を始める「ガイアフロー」(同市清水区・中村大航社長)が活用する予定。それに合わせ山本社長は「地区の活性化になれば」と、ウイスキー蒸留所の近隣地に新たな農地整備を進めている。

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【メディア】Bloomberg GLOBAL FINANCEに掲載されました

2016年4月27日 Bloomberg GLOBAL FINANCE

国産ウイスキー 秩父の大麦で挑戦

秩父山地を望む丘陵地帯に青々とした大麦畑が広がる。栽培されているのは、明治時代に初めて欧米から導入された醸造用大麦を起源とする「ゴールデンメロン埼玉1号」。戦後から1970年代まで生産され、その後は保護のために埼玉県が遺伝資源として保管していたものを秩父市の農家、坪内浩氏(36)が譲り受け、今年から有機栽培に挑戦している。

丈は6月上旬までに60センチを超え、収穫後は近くの工業団地にある国内唯一のウイスキー専業メーカー、ベンチャーウイスキーの倉庫へと移される。順調にいけば、大麦は数カ月寝かされた後、水に浸して発芽させて麦芽(モルト)となり、1年以内には蒸留されウイスキー原酒となる。数年後にはこの畑から世界の愛好家が熱望するプレミアムウイスキーが生まれるかもしれない。

ならではの個性を

2000年代に入って数々の国際コンペティションで入賞し世界の五大ウイスキーの一つに数えられるようになったジャパニーズウイスキーの原料のほとんどは、モルトとして英国など欧米諸国から輸入されている。ベンチャーウイスキーも英国産とドイツ産を購入しているが、将来的には地元産を10%程度利用することを目指している。

ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎社長(50)は、外国産に比べコストが5倍の地元産モルトを使ってウイスキー作りに挑戦する理由について「自分なりにいいスピリッツ(蒸留酒)を生産し熟成させていこうと思う中で地元産原料を利用しようと考えた。地元の環境を生かしたものを積み重ねていけば、10年、20年たった時に秩父らしいウイスキーにたどり着くような気がする。秩父ならではの個性を持てた時に本当の意味で世界に通じるウイスキーになると思う」と語る。

04年に同社を創業した肥土社長の実家は1625年から続く日本酒の造り酒屋だった。祖父が創設した東亜酒造が1980年代にウイスキー製造の羽生蒸留所を設立。肥土社長は営業マンとして勤務していたサントリーを95年に退社後、入社した。

ところが90年ごろから始まったウイスキー不況のあおりを受け、同社は2000年に民事再生法の適用を申請。父と祖父が造ったウイスキー原酒400樽は廃棄されることとなった。同社長はこれらの原酒を福島県の笹の川酒造の協力で貯蔵してもらい、その後、自身で引き取って商品化した。

07年に現在の場所に秩父蒸留所を建設。社員数14人と小規模ながら、今や世界のウイスキー愛好家が最も注目するジャパニーズウイスキーメーカーの一つだ。羽生蒸留所で造られた原酒などを使って同社が製造した「イチローズモルト」は06年に英専門誌「ウイスキーマガジン」のプレミアムジャパニーズウイスキー部門で最高得点を獲得。これをきっかけに海外で評価を高め、15年8月に香港で開かれたオークションでは、瓶のラベルにトランプの図柄をあしらったカードシリーズ54本セットが380万香港ドル(現在のレートで約5300万円)で落札されるなど、コレクターから熱い視線が注がれている。

国内外で需要拡大

ベンチャーウイスキーが創業から10年余りで世界に名だたるメーカーとなった背景には、ジャパニーズウイスキーの国内外での旺盛な需要がある。財務省の貿易統計によると、ウイスキーの輸出額は15年、前年比77%増の約103億7800万円と過去最高に達した。05年と比較すると11倍余りに増えた。3月に国税庁が発表した統計によれば、ウイスキーの国内消費量は14年度に11万8000キロリットルと前年度比で9.5%増加した。

大手メーカーは値上げや輸出抑制などで需要拡大に対応している。

国内最大手のサントリーホールディングスは急激な需要増に対する需給バランス調整と、10年以降120億円の設備投資を行って製造コストが増えたことから、今年4月に一部のウイスキーの価格を最大25%引き上げた。ニッカウヰスキーを傘下に置くアサヒグループホールディングスは安定供給に向けて今年の輸出目標を14万5000箱と、昨年の実績18万3000箱から引き下げている。

ウイスキーの国内市場はサントリーとニッカの大手2社で約9割を占め、地ウイスキーメーカーは十数社にとどまる。そのうちの大半は清酒や焼酎を主力としているが、旺盛な需要を背景にウイスキー専門の蒸留所の設立が相次ぐ地ウイスキーブームとなっている。これらの蒸留所に共通しているのは地元産原料へのこだわりだ。

ガイアフロー(静岡県静岡市)の蒸留所は7月に完成予定。製造開始は10月で、最終的な目標は年間10万リットル。初年度はスコットランド産輸入モルトを利用するが、地元農家が既に昨年11月からモルト用大麦の栽培を開始している。中村大航社長(47)は「ゆくゆくは水、酵母、大麦すべてが静岡産のウイスキーを造りたい」と語る。

堅展実業(東京都)は国内メーカーから原酒を購入して輸出していたが、ウイスキーブームで原酒を確保できなくなり自社で製造することにした。北海道東部の厚岸郡で建設中の蒸留所で10月から蒸留をスタート予定。最初は輸入モルトを使うが、将来は地元産の利用も考えており湿地のピート(泥炭)も活用してスモーキーな味わいを目指すという。

安定した品質保つ

愛好家でつくるウイスキー文化研究所代表で「シングルモルトウイスキー大全」などの著書があるウイスキー評論家の土屋守氏(62)は、コストと合理性を追求する大手メーカーと差別化するため地元産原料にこだわるクラフトブームは欧米でも見られると言う。しかし、日本の場合は原料コストが諸外国に比べ高いことと、小規模メーカー向けに大麦をモルトに加工する製麦専門企業がほとんどないことが課題と指摘する。

日本はかつて地ウイスキーブームを経験している。国税庁の統計によると、ウイスキー製造免許場の数は1980年代には約80カ所に上っていた(14年度は52カ所)。ただ、当時は原酒を購入しブレンドして販売するだけのケースも多かったのではないかと、土屋氏は話す。今回の地ウイスキーブームは、ベンチャーウイスキーをはじめスコットランド製の本格的な蒸留器を導入するメーカーが目立つのが特徴だという。

スコッチウイスキーを名乗るためには現地で蒸留されたものでなければならないなど詳細な規則が定められているが、ジャパニーズウイスキーについては公的な定義はない。土屋氏は「ジャパニーズウイスキーとは何かということを明確にする必要がある。また、売れているからといって昔の粗製乱造に戻ってはいけない。品質を保ちながら生産を続けていくことが重要だ」と指摘する。

ベンチャーウイスキーの肥土社長は現在は年間10万本の出荷量を、毎年20%ずつ安定して伸ばすことを目標にしている。仕込み回数を増やすなどの方法で増産は行うが、設備投資は予定していない。ブームで生産が増減するのはウイスキーにとって良くないとの考えからだ。「ウイスキーは子供のよう」と語る同社長は、一定の原酒のストックを残しながらウイスキーを飲む喜びを分かち合いたいと言う。

スコットランドでウイスキーの製法を学んだ竹鶴政孝氏が1924年に日本で初めて本格的なウイスキー製造を開始してから90年余り。「寒冷地のスコットランドとは違い、四季のある環境での熟成を繊細な感覚で追求してきた日本人は勤勉さと探究心で、多彩だがスコッチほど荒々しくないフレーバーを表現できるようになった。ジャパニーズウイスキーはピークに達しつつある」と土屋氏は分析する。

そんなジャパニーズウイスキーの歴史に今、地元産大麦の利用という新たな挑戦が刻まれつつある。

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