【メディア】アスタモリス代表バート氏のインタビューがウイスキー通信に掲載されました

2016年4月25日 ウイスキー通信 NO.32

編集長インタビュー
アスタモリスのバート・ブラネルさんに聞く

新進気鋭のボトラーズ
アスタモリスの魅力に迫る!

近年ウイスキーが静かな盛り上がりを見せているベルギーで、 2011年、新たなボトラーズが誕生した。創業者のバート・ブラネルさんが来日したのを機に、樽の選定や瓶詰め度数へのこだわり、さらには新たなジン造りへの想いを編集長が聞いた。

土屋:バートさんはベルギーご出身で、2011年に「アスタモリス」というボトラーズを設立されたんですよね。もとからウイスキーには関わっていたんですか?

バート:ウイスキーとの出会いは1994年、私が19歳の時です。以来22年にわたってウイスキーに携わってきましたが、実は、その歳までお酒は一切飲んだことがなかったんですよ。

土屋:そうなんですか!?ベルギーと言えばビールなのに(笑)。ベルギーでは何歳からお酒を飲めるんですか?

バート:16歳です。でも私は飲む必要性を感じなかったんです。ところがある時、バーで働いていたカルロスという友人に勧められ、閉店後に一杯のウイスキーを飲ませてもらったんです。その 瞬間、雷に打たれました。あまりのおいしさに(笑)。そこから彼とウイスキーを飲むようになって、1999年には一緒にアイラ島にも行きました。でも、当時ベルギーに入っていたアイラモルトはブルイックラディ、ボウモア、ラガヴーリンの3つだけだったので、それ以外に蒸留所があるなんてまったく知らなかったんです。だから実際に行ってびっくりしました。他にもこんなに魅力的なウ イスキーがいっぱいあるじゃないかと(笑)。 一週間の滞在で完全にウイスキーの虜になってしまい、帰国し てからカルロスと共に「The Wee Dram Whisky Society」というウイ スキークラブを立ち上げました。設立して2年後にはメンバーも 100人くらいになり、その頃から自分でもウイスキーの記事を書き始め、2006年からは「モルトマニアックス」の審査員に迎え入れられました。ただ、審査員でいるためには中立の立場でいないといけないため、自分のボトリング会社を始める時に辞めました。

土屋:それがアスタモリスですね。最初のボトリングは何を?

バート:記念すべき最初のボトリングはベンリアックです。まだ会社をつくる前、サンプリングをしている時にたまたまその樽に出会って、飲んだ瞬間に衝撃を受けました。それで決めたんです。「この樽が欲しい。この樽を詰めるためにボトリング会社を立ち 上げよう」とね。それがアスタモリスで最初にリリースしたベンリアック1975のカスクNo.7227でした。私の生まれた年でもあるので、余計に欲しかったんです。

土屋:ちなみにアスタモリスってどういう意味なんですか?

バート:フランダース地方の言葉遊びみたいなものです。私の住む地域の方言では一応意味があるんですが、大した意味じゃありません。この名前にした最大の理由は、どの言語の人にとっても 呼びやすく、覚えやすい名前だったからです。英語でもフランス 語でも日本語でも、間違いなく発音できます。

土屋:たしかにアスタモリスってすごく言いやすいですよね。

バート:実はスタッフに聞かれるまで、社名が決まっていないことをすっかり忘れていたんです(笑)。でも聞かれた瞬間、アスタモリスという名前がパッとひらめきました。

土屋:今までに何本くらいリリースしているんですか?

バート:40 ~ 45種類くらいです。

土屋:樽は蒸留所まで足を運んで探すんですか?

バート:最近は難しいので、蒸留所のオーナーと商談を設けたり、 あとはブローカーを通すこともあります。

土屋:いい樽を見つけるのは、本当に難しいですよね。

バート:そうなんです。しかも私は本当にいい樽でなければ買わないので、気難しい顧客だと思われています(笑)。割合的には、サンプルを36種類もらって、その中の1本をボトリングするかどうかという感じです。会社規模が大きくないからこそ、自分の好きなものをとことん追求することができるんだと思います。

わずか1%の差にこだわって瓶詰め度数を決定

土屋:ボトリングはシングルカスクのみということですが、アルコール度数はいかがですか?

バート:もちろんカスクストレングスで出すボトルもありますが、 私にとってボトル選びはとても個人的なもので、自分が飲みたいウイスキーを自分が一番おいしいと思う度数でボトリングするのが信条です。だからすべてのボトルをカスクストレングス、もしくは46%、43%などの決まった度数でボトリングすることはあまり意味がないと思っています。子供の個性が一人ひとり違うように、ウイスキーも一つとして同じものはありません。たとえば今回持ってきたグレンマレイは47%ですが、私は度数を決めるために独自の方法を取っています。グレンマレイはサンプルの段階で度数が56%でしたが、そこから1%刻みで度数を落としながらテイスティングしていきます。加水をしながら49、48、47と落として いき、46%を試した瞬間に「あ、落ち過ぎた」と思い、もう一度47 %に戻してみました。それで飲んでみるとしっくりきたので、この樽は47%がふさわしいと確信したんです。非常にマニアックな作業だと思われるかもしれませんが、それくらいの情熱を持って取り組むべきだと思っています。

土屋:すごいこだわりですね(笑)。ガイアフローが出しているボ トルは「東海道五十三次シリーズ」など、どれも日本をイメージしたラベルですね。

バート:表ラベルは世界共通で、裏ラベルに浮世絵が描かれているのは日本限定です。今度新しく発売するボトルのラベルにはカエルがあしらわれているんですが、このアイデアは「ウイスキーフェスティバル2015 in東京」に来て思いつきました。ガイアフローがアスタモリスのシンボルであるカエルを大きく看板に使っているのを見てひらめいたんです。

土屋:カエルはもともと会社のデザインには使われていたんですね?

バート:そうです。最初のデザインは何もないシンプルなものだったので、もっとインパクトのあるものが欲しいとデザイナーにリクエストしたんです。それで彼がカエルを付け加えてくれました。今ではとても気に入っています。

土屋:ウイスキーには色々なラベルがありますが、カエルって珍しいですよね。

バート:私も変わり者なのでピッタリです(笑)。デザイナーのデイビッドとはとても仲良しで、考え方が似ているので、彼が上げてくるデザインは見た瞬間に「いいね!」となります。

土屋:東海道五十三次をラベルに使うのは、いいところに目を付けたなと思います。これは日本橋から順番にボトリングしているんですか?

バート:日本橋と京都の三条大橋の両方から順番に付けています。

土屋:五十三次が全部揃うのはだいぶ先ですよね(笑)。

バート:ボトリングしたいのはやまやまなんですが、アスタモリスのクオリティに見合うものじゃないといけないので(笑)。

土屋:バートさんは今どちらにお住まいなんですか?

バート:ベルギーの北西部、フランスとの国境に近い小さな町です。

土屋:ウイスキーのビジネスを始める前は何をされていたんですか?

バート:冷凍野菜の卸売業でした。でも今の仕事のほうがずっと好きです。ウイスキーのおかげでたくさんの国を訪れることができましたし、たくさんのユニークな人たちに出会いました。日本を訪れるのも4回目ですが、すっかり恋に落ちてしまっています。 これほど美しい国はありません。私が18歳の頃は、ベルギーを訪れる日本人観光客がカメラ片手に写真を撮っている姿を見ておもしろがっていましたが、40歳になった今、私は日本を訪れるたび に街中の写真を撮りまくっています(笑)。

土屋:日本の食事はどうですか?

バート:すばらしいです。お箸も最初は使えませんでしたが、完璧にマスターしました。その国の人と一緒にビジネスをするためには、彼らのカルチャーをリスペクトすることが大切です。ちなみに今の大好物はいぶりがっこです。あれにクリームチーズと醤油をかけて食べるとバツグンです(笑)。

土屋:分かりました(笑)。

世界的にも珍しい、ウイスキーの空き樽で熟成させたジン

土屋:それでは今回お持ちいただいたジンについても教えてください。

バート:これは「NOG」というジンで、「No Ordinary Gin」(普通ではないジン)の略ですが、NOGにはオランダ語で「More」という意味もあります。色を見てもらえば分かるとおり、普通のジンは無色透明ですが、NOGは違います。アスタモリスをボトリングしたあとの空き樽で熟成をさせているんです。

土屋:なるほど。おもしろいですね。

バート:ジンを造り始めたのは2年前ですが、それまでジンに興味はありませんでした。でもある日、アスタモリスのボトルを見た男の人がふと、「ウイスキーのようにそのままニートで飲めるジンがあればいいのに」と言ったんです。ウイスキーは買って帰ってボトルを開ければすぐに飲めますが、ジンの場合は氷やレモネ ードを入れて、ハーブやビターズを加えて、ようやくおいしく飲むことができます。その男の言うことはもっともだと思い、10ヵ月後にはこのジンが誕生しました。熟成をさせていないタイプは 「魂」という名前で日本に輸出しています。魂も普通のジンとは一味違って、よりフルーティなんですが、それをさらに8ヵ月ほど樽熟成させたのがNOGなんです。熟成によって、ジンが劇的に変わることが証明されました。

土屋:ジンの蒸留設備は持っているんですか?

バート:持っていないので、ベルギー国内で4つの蒸留所と提携して造ってもらっています。ジュネーブからベルギー、オランダにかけては昔から蒸留業が盛んな地域で、いい技術を持った蒸留所がたくさんあるんです。

土屋:ボタニカルのレシピはバートさんが選んで?

バート:はい、私のオリジナルレシピです。

土屋:4つの蒸留所はどんなレシピにも対応してくれるんですか?

バート:そうです。そんなレシピでは造れないと断られたことは一度もありません。

土屋:ちなみにどんなレシピなんですか?

バート:メインのボタニカルはタンジェリン、カカオ、モルト、ジュニパー、コリアンダー、アニスシード、スターアニスなどです。NOGができあがった時、ベルギーの一流バーテンダーにテイスティングをしてもらったんです。ウイスキーに関しては経験もあって何がおいしいか分かっていたんですが、ジンに関してはまだ自信がなかったので。最初は彼も半信半疑だったんですが、味見をしたらいいジンを造ったなと言ってくれました。それでNOGのバッチ1は評判になり、あっという間に売り切れてしまいました。

土屋:バッチ1はモートラックの空き樽に詰めて熟成させたものですね。

バート:そうです。同じ樽で2度目の魔法がかかったわけです。私は樽こそがウイスキーにとって一番重要な原料だと思っています。最高のスピリッツを最高の樽に詰めて寝かせれば、最高のウイスキーができ上がります。でもいくらスピリッツが良くても、 悪い樽に入れてしまえば悪いウイスキーにしかなりません。樽によってすばらしいウイスキーが生まれるなら、同じ作用がジンにも起きると思ったんです。私が買う樽はすべて最高品質の樽です。だからその樽にジンを詰めれば、おいしくなるという確信があり ました。

土屋:それはすばらしいアイデアですね。シェリー樽も使ったことがあるんですか?

バート:最近オーヘントッシャン1991の樽を出したので、それにジンを詰める予定です。それが初めてのシェリーカスクになりますが、試してみてダメなら捨てます。自分が200%気に入ったものじゃないと、ボトリングしたくありませんからね。

土屋:それは楽しみですね。ここからは実際にジンをテイスティングしながらお話を聞きたいと思います。まずは熟成させていない「魂」のバッチ1から。いい香りがしますね。味もおいしいです。普通のジンよりもすごくソフトでフルーティ、そして丸みがある。

バート:熟成させたNOGは、もっとまろやかですよ。

土屋:なるほど。蒸留直後のジンはアルコール度数は何度くらいですか?

バート:60%です。

土屋:じゃあそれを46%まで加水したんですね。

バート:一般的なジンは38%ですが、そんなのはジュースと一緒でアルコールとは呼べませんよ(笑)。私は強いスピリッツが好きなんです。

土屋:熟成させたNOGはよりフルーティ、よりシトラスを感じますね。すごくタンジェリーが効いている。未熟成のものはまだジュニパーなどの香りがしますが、NOGになるとシトラスのすごくフレッシュな香りがする。樽熟成でこんなに変わるんですね。これはすごい、ちょっと驚きですね。では未熟成の「魂」バッチ2も 試してみましょう。これはレシピも違うんですか?

バート:ジュニパーを15%増量しただけであとは何も変えていません。でも仕上がりは結構違うものになっています。

土屋:よりスパイシーですね。しかし、バートさんのところのジンは非常におもしろい。こういうものが造れる環境にいること自体がすばらしいし、うらやましいですね。日本で同じことをやろうとしても、ジンの蒸留所はないですし、自分で決めたレシピどおりに蒸留してくれって頼むこともできない。そういう意味でも大変貴重なジンだと思います。今日はいろいろとおもしろいお話、ありがとうございました。

バート:こちらこそ、ありがとう ございました!

 

バート・ブラネルさん
2006 年よりモルト・マニアッ クスの審査員として活躍し、 2011 年にインディペンデント・ ボトラーとしてアスタモリスを設立。繊細でデリケートなウイスキーを好み、カスクの選定には定評がある。2013 年よりオリジナルレシピでジンのプロデュースも手掛ける。

 

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