ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 【アスタモリス編】

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京(2019年11月19日開催)のアスタモリス編として、セミナー全文を掲載します。


ガイアフロー BASA
プロフェッショナル・セミナー in 東京
【アスタモリス編】
話し手:アスタモリス
代表 バート・ブラネル氏


みなさん、おはようございます。アスタモリスです。
このセミナーを、どうやって始めようか、ちょっと考えているところです。というのも、ロビンの後だとかなりプレゼンがしにくいから(笑)。

私がウイスキーを飲み始めたのは、1994年、19歳の頃。
それまでは、アルコールは一滴も飲んだことがありませんでした。私の妻は、だから好きになった、と言ってたんですけどね(笑)

ある日、隠れ家的バーで働いている友人が、「バート、ウイスキーを試してみないか」と声を掛けてきたのです。
「僕がアルコールを飲まないのを知っているだろ? なんでそんなことを聞くんだよ。」

でも、その友人は熱心に説得してきました。ウイスキーとはこういうもので、こういう特色があって、と。
それで、「いいよ。持ってきてよ。」と言った私に、友人はジャックダニエルのシングルバレルを持ってきました。

味わった瞬間、電撃が走るようでした!
一瞬で恋に落ち、ウイスキーを愛してしまっていました。

その1週間後に、2回目のウイスキーをそのバーで味わいました。さらにその後、3回目のウイスキーを体験をしました。
でも、そのバーには3つしかウイスキーが置いてなかったんです。なので、もう他のウイスキーを試すことができない。

それで、今度は自分でウイスキーのボトルを買うことにしました。1本買って、2本目を買って、3本目、4本目…というように。

ある日、とうとう、スコットランドに行こう!と決意しました。アイラ島に1週間。どうしても、ボウモアと、ラガヴーリン、ブルックラディの3つの蒸溜所にに行ってみたかったからです。これは、自分が味わったことがある蒸溜所でもありました。

1998年、遠い昔の20代だった自分にとっては、その3つだけが重要だったんです。そのほかの蒸溜所は、名前も発音できないくらい。

初めて知った蒸溜所のウイスキーは、すごくピーティー。その味わいに夢中になりました。滞在中は、とにかく知らない味わいのウイスキーを、たくさんテイスティングをしました。そして、スーツケースをウイスキーのボトルでパンパンにして、ベルギーに帰りました。

その後、1999年に、ウイスキーのクラブを立ち上げました。
それから、ウイスキーの雑誌の刊行とブログの開設をしました。ブログは、モルトマニアックスと言って、ウイスキーに関する記事を英語でアップするものです。さまざまな国の24人のライターが書いた記事を、世界中の人が見ることができます。

この時、世界トップ5に入るほど素晴らしい蒸溜所に巡り合った時期でもありました。それは、インドのバンガロールにある蒸溜所(アムルット)です。

モルトマニアックスでは、200を超える銘柄のウイスキーをブランドでテイスティングし、審査をするというようなことも始めました。その結果を公表し、メダルを授与するのです。

審査銘柄の中には、ブラックアダーも含まれています。
そして、アムルットも。アムルットは、いつも高得点を獲得していました。2005年〜2006年頃に、インドの男性誌に招待されて、アムルットの記事を書いたこともあります。蒸留所を見学して、インタビューしたんですよ。

そして、2008年。私は、ベンリアック蒸留所にいました。1975年蒸留の樽からサンプリングをし、テイスティングをしていたのです。
信じられないほど美味しくて、自分のブランドを立ち上げようと思いました。その日が、アスタモリスが誕生した日です。
その樽を買って、初めてボトリングをしました。そこで思ったのが、「一体誰が、この見ず知らずのボトルを買うんだろうか」ということ。
でも、1週間後には完売。これが、アスタモリスの誕生秘話です。

その2年後のある日、facebookのメッセンジャー経由で連絡がありました。日本からで、面識のない人です。
「日本向けボトルのサンプルが欲しい」という内容に、ジョークかと思いました。友達が、ドッキリを仕掛けているのかと思ったくらいでした。
言われた住所にサンプルを送って、2週間後、「ボトリングをお願いしたい」と、連絡がありました。まだジョークだと思っていました。
信じられないまま請求書を送ったら、2日後に入金があったので、「ドッキリじゃない!」とわかりました(笑)。

その時の樽は、ボトリングされて日本へ。
2ヶ月後、今度は大航さん(ガイアフロー代表の中村大航)から、お誘いがありました。2014年9月に、東京インターナショナル・バー・ショーというイベントがあるから、来てみないかというのです。OK!と言って、日本に来ました。私は、いつもOKというようにしてるんです。

バー・ショーは、2日間。でも、誰も私に話しかけてくれませんでした。手を前に組んで、ずっと立っていただけ。
その時に、日本独特の文化があることを知りました。自分のことを知ってもらうことで、コミュニケーションが取れる、というような。なので、みなさんに覚えてもらえるよう、何度も顔をあわせる必要があると考えました。

初来日時、イングランドから来た人がいるという話を聞きました。その人の名前は、ロビン・トゥチェックです。

ロビン氏:「イギリス人は、そんなにいっぱい日本にいないよ」

まぁまぁ、先にもうちょっと話をさせてよ。

ロビンが教えてくれたのは、「日本というのは何度でも戻りたくなってしまうような魅力的な国」ということ。最初は、「はいはい、わかる、わかる」とお世辞だと思って聞いていたのです。
1週間後にベルギーに帰ってから、ロビンに「君が言ったこと覚えている?」と聞いてみました。ロビンは「よく覚えているよ」と。それで、言ったのは「教えてくれたよりも、ずっとひどい。(1週間しか経ってないのに)僕はもう日本に戻りたいと思ってるよ」。

初来日の時は年に1回、2年目は2回、3年目は3回。何度でも、日本に行きたくなってしまう。いつも僕を温かく迎え入れてくださって、ありがとうございます。そして、日本でたくさんの素晴らしいバーも発見することができました。

さっきロビンは、いくつかベルギーについてのジョークを言っていましたよね。私には、その理由がわかっているんです。昨年の、サッカーのワールドカップが原因です。ベルギーがイングランドを打ち負かしていたので、スコットランドを含めて、みんなベルギーを羨んでいるんですね。2週間で2回勝ってますから(笑)

さて、そろそろ、テイスティングを始めましょう。
先ほどたくさんのことをロビンが教えてくれましたが、私の伝えたいことも同じことなんです。
ロビンと僕は、ボトラーで、大体同じようなことをしています。ロビンの方が、きちんと仕事をしてるかもしれないけど(笑)。ロビンはさっき、「ウイスキーは楽しむことが第一」と言っていましたが、これは本当にその通りだと思います。

たまに、こんな人がいますよね?香りを嗅いで、点数を付けているような。そんな人を見ていると、楽しむことを忘れているんじゃないかなと思います。テイスティングした時に、「これはイマイチ」「こっちは、ちょっとマシ」「はい、次は…」というような、悪い面ばかり見るような人とか。

そうではなく、そのウイスキーのいい面を、もっと見て欲しいと思います。いい面を感じられると楽しいし、笑顔になれるから。その結果、ポジティブな人は、もっとポジティブになれるのではないでしょうか。それは、生き方にもつながることです。粗探しをしていると、やっぱりネガティブになっていくような気がします。

一番最初のウイスキーは、グレンゴインです。
グレンゴインは、とても「典型的」な蒸溜所。その理由は、ハイランドで蒸留されて、ローランドで熟成されるから。
グレンゴインの蒸溜所は、ローランドとハイランドの境目にある蒸溜所なんです。ローランドウイスキーなのか、ハイランドウイスキーなのか、悩むところですね。蒸留はハイランドでしているということを考えると、ハイランドウイスキーといった方がいいと私は思っていますけど。

アスタモリス フォー ガイアフロー グレンゴイン 「土山」 9年 2007/2016 48%
Asta Morris for Gaiaflow Glengoyne “Tsuchiyama” 9yo 2007/2016 48%

このグレンゴインは、リフィルのバーボン樽(2回目の樽詰め)で熟成されたものです。樽の成分の影響を比較的少なくしたい場合に、このようなリフィルの樽を使用します。蒸溜所そのものの個性を、うまく引き出すような役割を果たしてくれるのです。
ファーストフィルのバーボン樽(1回目の樽詰め)のような、まだ成分が樽に残っているような場合は、かえって蒸溜所の個性をかき消してしまうようなこともあります。

そう言えば、大企業のマーケティング広告を見て、笑ってしまうことがありました。
雑誌社の友人が、ある時、ある大手企業のウイスキーの記事を書いたんです。蒸溜所のマネージャーが、ボトリングをするために熟成庫に連れていってくれたそうなのですが、その時に、一緒に連れていった犬が粗相をしてしまったというんです。そんなことをコラムで大々的に取り上げるなんて!(笑)

でも、その記事でさらに面白かったのは、大手企業のマネージャーがボトリングした商品を「自らの手で選び抜いた(Hand selected)」と表現していたこと。とても大きな会社なのに、どうやってひとつひとつ選べるの?と思いました。

同様に、「クラフト」という言葉も、よく広告で使用されていますね。クラフト=小さいというイメージを持ちがちですが、小さい=良いではないわけです。私も、小さなスケールでビールを造ったりしますけど、必ずしも美味しいわけではありません。

さて、グレンゴインの話に戻りましょう。リフィルのバーボン樽で熟成させたものですよね。このウイスキーに対する、みなさんの印象を教えてもらえませんか?

テイスティングというのは、とても個人的なものだと思っています。味わいを表現することはできますが、実際どのような味なのかを完璧に共有することはできませんから。

どんな樽を選ぶか、それぞれの好みです。ウイスキーにコーラを入れる人もいますが、それも好みじゃないでしょうか。

ガンガ氏:「私なら許せないね。撃ち殺してしまうよ!(笑)」
中村大航:「そういえば、バートは、ダイエットコークを飲みながら、テイスティングしてたことがあったよね(笑)」

そう、ダイエットコークを飲みながら、テイスティングすることもありますよ。モルトマニアックスのテイスティングの時は、6つずつグラスが用意されています。1つずつノートをとって、審査をするんです。そんな時、ダイエットコークを間に飲んで、口の中をリセットしているんです。新しいものを飲むときには、いつも同じ状態から始めます。

今日、もし私が死ぬようなことがあったら、犯人は多分、ガンガですね(笑)。

次のウイスキーは、マクダフです。
これは2002年蒸留、2017年にボトリングされた14年もの。マクダフ蒸溜所というのは、港町にある蒸溜所で、港町の名前も同じくマクダフといいます。
先ほどと同じくバーボン樽ですが、より容量の大きいホッグスヘッドサイズの樽を使用しています。ホッグスヘッドの容量は、250ℓ。

アスタモリス フォー ガイアフロー マクダフ 『庄野』 14年 2002/2017 52%
Asta Morris for Gaiaflow Macduff “Shono” 14yo 2002/2017 52%

ロビンも私も、バーボン樽が好きですし、バーボン樽こそが王様と思っています。ということは、シェリー樽は女王かな。……これはジョークね。

このマクダフは、とっても、ものすごくフルーティー。バナナ、柑橘系、そしてマクダフ蒸留所の個性がよく感じられます。見ての通り着色も、冷却濾過もしていません。脂肪分と油分を残して、浮遊物だけを取り除いています。

ここでお話ししておきたいのは、水とウイスキーについてです。もしウイスキーの味が少し強かったり、あるいは少しアルコールが強くスパイシーに感じたら、何滴か水を足してください。自分にあった度数に調整して、好みの味わいを楽しんでくださいね。

昔、ジム・マーレイのテイスティング会に参加したことがあります。そのときに彼が言っていたのは、「加水をしないように」ということ。

3ヶ月後に、今度はジム・マッキュワンのセミナーに参加しました。ジム・マッキュワンと言えば、ブラックボウモアやボウモアフィノ、ホワイトボウモアなどを蒸留した伝説的な人物。その彼は、いつも必ず「水を足してください」と言っていたんです。

2人のジムの話に、かつての私は混乱しました(笑)でも、グラスの中に入ったウイスキーは、あなたのウイスキー。水を足すのも、足さないのも、自分で決めていいんです。

ロビンも説明していましたが、油分や脂肪分は、香りや味わいの元となります。加水をすると、香りが立ち上ってきます。

おすすめしないのは、氷を入れること。入れてしまった場合は、違った結果となります。氷の周りに、香りの元となる油分が集まって、ウイスキーの複雑な味わいがなくなってしまうのです。このような理由から、氷を足すことはおすすめしません。

ロビン氏:「加水する水の温度も、重要なポイント。常温の水を足すか、冷たい水を足すかによって、味もかなり変わってくる」

そうそう、それも同じこと。

アスタモリスでは、私自身の好みのと思われる量の加水をして、ボトリングをしています。45%、46%と一律に加水するブランドもありますが、本来それぞれ樽ごとに異なる個性があると思います。そのため、それぞれの味わいが開く度数になるよう、一つ一つ丁寧に調整をしています。

カスクストレングスでいいものはそのままでボトリングします。そのほかにも59%だったり、52%だったり。それぞれの個性が生きるよう、少しずつ調整しながら、ボトリングの度数を決めています。

でも、46%以下にすることはありません。40%でウイスキーをボトリングするなんてことは、法律で禁止されるべき!と思うくらいです。そんなことをする蒸溜所やボトラーは、脚に銃弾を撃ち込まれてもいいんじゃないでしょうか(笑)

3つ目のウイスキーは、「オークニー島のウイスキー」。
どこの蒸溜所のもの?というのは、よく聞かれます。ひとつヒントをあげましょう。蒸溜所の名前を言うことはできませんが、蒸留された2007年は、島内に2つある蒸溜所の内の1つ、スキャパ蒸溜所は休止していました。

アスタモリス フォー ガイアフロー シングルオークニー モルト 「大磯」 11年 2007/2019 58%
Asta Morris for Gaiaflow Single Orkney Malt “Oiso” 11yo 2007/2019 58%

この蒸溜所の特徴でもありますが、ピートの強さは、ローランド地方のノンピートのものとアイラのヘヴィリーピーテッドのものの、ちょうど中間くらいのように感じます。とてもエレガントで優しいピートの味わいと、ワクシーさ。ダルユーインやクライネリッシュのような印象もありますね。ディーンストンも、たまにこんな感じのものがあります。オランダのことわざで「ロバは、同じ岩にはぶつからない」というものがありますが、私の場合、ウイスキーに限っては、同じようなものに5回はあたっていますね。

この蒸溜所のウイスキーは、通常はブレンデッドウイスキーの原酒として使用されます。例えば、フェイマス・グラウスとか。まぁ、それでも蒸溜所名は言えませんけどね。

個人的に、私はこのウイスキーがとても気に入っています。自分の好きな味わいのウイスキーをボトリングするのが、インデペンデンボトラーですから。そして、ブラックアダーも、アスタモリスもそれぞれの好みに合うようなものを選んでいます。「自らの手で選び抜いた(Hand selected)」ということです。

ロビン氏:「どっちの手?」

ロビン!いつも私のことを見てるからわかるでしょう?左手ですよ(笑)
そんなに茶化して、まだ、ベルギーがサッカーで勝ったことを恨んでるんだね。

ロビン氏:「そんな大したことじゃない」
ガンガ氏:「1年前は、逆だったじゃないか。ベルギーが負けたでしょ?」

まぁまぁ、落ち着いて。
最後にご紹介するのは、みなさんご存知の蒸溜所、秩父です。(シャッター音がたくさんするので)ロックスターのようですね。ラベルのカエルは、「ぴょん吉」と言います。なので、言うなれば「ぴょんき秩父」です。

これで3回目となる、秩父とのコラボです。このぴょん吉ラベルに至るまで、ものすごく変わったいきさつがありました。

アスタモリスのラベルには、必ずカエルが描かれています。いつも同じカエルだったのですが、ある日突然、ぴょん吉からのメッセージを感じました。ぜひラベルで使いたいと思って、日本の友人に依頼して、ぴょん吉の著作権者と連絡を取ってもらいました。著作権者との打ち合わせをし、ボトル1本を使用料として渡すことになりました。なかなかお得な条件ですよね(笑)

ぴょんき秩父は、お手元にあるプラスチックカップに入っています。私は、5回目のテイスティングとなります。サンプルでもらったものを家でテイスティングをしたり、ウイスキーフェスティバル後にもテイスティングしました。

こちらも、樽はバーボン樽です。光栄なことに、これで3回目のコラボとなりますが、これまでの3回とも、全てバーボン樽熟成のウイスキーでした。好みはありますが、私は秩父のウイスキーは、バーボン樽熟成の方が好みです。秩父の個性が、よりはっきりと出ていると感じています。

最初のものは5年、2回目のものが6年、今回のものは7年になります。
実は、「アスタモリス×秩父の30周年記念コラボ商品の27年熟成」です。冗談ですけどね(笑)。

さて、アスタモリスのウイスキーをテイスティングしていただいて、ありがとうございました。あらためて、みんなで秩父で乾杯しましょう。

会場一同:「カンパイ!」

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 【ブラックアダー編】

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 (2019年11月19日開催)のブラックアダー編として、セミナー全文を掲載します。


ガイアフロー BASA
プロフェッショナル・セミナー in 東京
【ブラックアダー編】

話し手:ブラックアダー・インターナショナル 
代表 ロビン・トゥチェック氏


こんにちは。今日はお集まりいただき、ありがとうございます。月曜日なのにみなさん、他に行く用事がないのかなと思ってしまいます(笑)

この中には、私がお会いしたことがある方もいらっしゃいますね。あそこにいる男性は色々と樽を集めていますし、彼は私の人生をかなり変えてくれました。私たちはとてもいい友人です。あそこに座っている女性も僕の友達で、お隣に座られている男性も私は知っています。東京にはすごく素晴らしいバーがたくさんあって、みなさん誇りを持ってバーを経営されていると思います。

私に会ったことがあるよ!って方はいらっしゃいますか?もしよかったら、手をあげてください。(多くの方の手が挙がりました)
もう一度会いに来てくれてありがとうございます(笑)

 今日はみなさんに3つのブラックアダーのウイスキーを用意しました。私の個人的な好みがどれかは今回は紹介しませんけど、僕が好きなブランドのものを紹介したいと思います。

私にはすごく単純で、でも大事にしている哲学があります。「人生は楽しいものであるべき」という哲学はさておき、「幸せに生きる」っていうことももちろんですが、人生には無駄に過ごす時間は無いのです。人生は一日一日を楽しく生きるべきです。なぜなら、いつの日か、そうなるからです。

人生の哲学はこの辺にしまして、ブラックアダーの哲学をお教えしたいと思います。僕の人生は、ウイスキーを飲みながらスタートした訳ではありません。赤ちゃんはウイスキーを飲みませんからね(笑)

僕は最初に子どものコミックを、作るような会社でキャリアをスタートしました。子ども用のアニメの脚本を書いたり、ジョークを考えたりしていました。子ども用のテレビ番組の制作にも携わって、10代向けのスポーツなどを特集した雑誌を作っていました。

僕はこの部屋でただ一人、ABBAに会ったことのある人物だと思います。ロンドンに住んでいる時には、ロット・スチュワートのすごくいい車にも乗らせてもらいました。僕は昔、大物スターにインタビューする機会をたくさん持っていました。そういった大物セレブと仕事をする機会がありました。僕もそのうちの一人になったというわけです。

僕はユーモアがとても好きなのですが、もし笑えないようであれば、この後のベルギー人のジョークでは、もっと笑えないでしょう(笑)アムルットのガンガがすごく笑っていますね。

その後、アルコール関係の雑誌の作成に携わっていました。「ドリンクセンター・ナショナル」という雑誌でした。アシスタント編集者として活動して、ワインなどを特集していました。編集者の方もフランスやロンドンに、ワインの取材に行っていたして、その後は蒸留酒を特集する係になりました。

もうこの時、既にウイスキーには興味があったんですけど、1992年、皆さんが生まれる前のことだと思うんですけど(笑)グレングラント蒸留所を訪ねました。蒸留所やウイスキーの会社のインタビューで、セールスマネージャーの方ともたくさんお会いしました。その前にもそういった方々と会ってはいたんですけれども、このグレングラント蒸留所で、初めて樽からそのままウイスキーを味わうことになりました。

あまりのおいしさに本当に驚きました! その時までは、飲んでいたウイスキーは販売する商品として濾過されたものも多かったのです。そしてカラメル色素で着色されたものを、僕は口にしていました。ただグレングラント蒸留所で飲んだものは、本当に僕に衝撃を与えました。

その後、私はヘッドハンティングされて、広告の会社に務めることになるんです。その時はマッカランであったり、ドランブイだったり、ワインなどを担当していました。それから、私は自分の会社を立ち上げることになり、ワインと蒸留酒を取り扱うことになりました。その時の取引先のひとつはタムナヴーリンです。

そして私は、「マスターオブモルト」というコンペティションを開く運びとなったのです。これはタムナヴーリンのモルトウイスキーとも関連がありました。ジョン・ラモンド氏が、そのコンペティションの優勝者となりました。

私は「モルトウイスキー・ファイル」というウイスキーに関する本も書いておりまして、味覚の鋭いジョンにウイスキーのテイスティングコメントを書いてもらい、私はウイスキーの歴史や背景などの部分を書いて本を出しました。その自分の本の中ではウイスキーに関する評価はつけず、ウイスキーの個性を引き出すような内容を書いていました。ジョンも含めて自分も、ウイスキーというのは人それぞれ好みが分かれると考えております。

本は再販もされまして、日本語にも訳されています。私はまた改訂版にも取り掛かる予定であります。今後にご期待ください。ただ、ウイスキーを売り込むのに時間をとられて忙しいので、なかなか取りかかれていないのですが(笑)

その後、私は「マスターオブモルト」という会社を立ち上げまして、ウイスキーを英国で売り出しました。「マスターオブモルト」のラベルで、いくつかのウイスキーを販売しました。その会社に関わっていた他のメンバーと、経理面で問題がありまして、意思の疎通もなかなか図れなかったので、1995年にその会社を辞任しました。

そして同年の4月1日に、ブラックアダー・インターナショナルをスタートしました。それで今ここに私がいるのです。日本に来たのは飛行機で飛んできたのですが(笑)これまでに60〜70回、日本に飛行機で来ています(笑)パスポートもパンパンになったので、ページをかなり追加しています。

 ここでウイスキーを飲み始めたいと思います。私は普段ピーティーなものは最後に持ってくるようにしているのですが、今回、「パフアダー」が46%とかなりアルコール度数が低いので、はじめに持ってきています。

みなさんにいつもお伝えしていることですが、まずは香りを嗅いでください。ノージングという言葉をご存知じゃない方もいらっしゃると思いますけど、どういう風にするか、今からご紹介します。

ウイスキーを手に取っていただいて、2つの動作を今から紹介します。ちょっと顔を傾けて、グラスを顔の前に持ってきて、口のあたりで香りを嗅いでください。ウイスキーの香りをもうちょっと引き出したかったら、グラスの上に手を置いて蓋をして、1分ほど持っていてください。

「パフアダー」は複数のシングルモルトウイスキーをブレンドしたものなんですが、そのうちの一つがピーテッドです。これはみなさんに、ピートのふわっと(訳注:英語ではパフと表現する)香ってくる香りを楽しんでいただきたいと考えています。

この後、また香りを嗅いでいただきます。グラスの上に被せてある手を外してください。被せてない方の手を外すと落ちてしますので(笑)こうすることで、もっと香りを感じられると思います。アルコールが温められることによって香りが立ち上ってくるのです。後でアムルットのガンガが、温暖な気候で造られたウイスキーとその香りの関係性について話してくれるかと思います。

ウイスキーを味わう時は、少し口に含んだ上で、舌触りや味わいを楽しんでいただけたらと思います。私たちはこのウイスキーを「パフアダー」と呼んでいます。「パフ」というのは煙のことで、「ブラックアダー」は黒い蛇という意味です。私たちの通常のボトルにも黒い蛇が描いてありますが、台湾の輸入業者の人は、これを「悪魔の精子」という風に呼んでいます。彼はすごくユーモアな方ですね(笑)

もし一回味わっていただいて、味が強いようだな、と思ったら、水を1滴か2滴くらい足していただくこともできます。ブラックアダーのウイスキーを、僕は普通にストレートで楽しむ時もあれば、水を少し足して飲む時もあります。気分にもよるので、同じウイスキーでもたまに薄めることもありますし、そのまま飲むこともあります。ブラックアダーのウイスキーに水を足していただいても、全く問題はありません。

ブラックアダーにはすごく特別な調査チームがあるんですが、あるときブラックアダーのウイスキーにコカコーラを足して飲んでいる人々がいる!という調査結果が判明したことがあって、私たちは彼らを罰したいと思いました(笑)

コカコーラを別の飲み物に足してくださっても結構なんですけど、みなさまにはモルトの、特に樽の香りを楽しんでいただきたいと思っております。日本ですごく有名で人気な飲み方に、ハイボールがあると思います。特に暑い日には、いいと思います。パフアダーのもう一つの美味しい飲み方は、ハイボールにした時にソーダとすごく合うところです。

 次のウイスキーをご紹介したいと思います。みなさまに今日お伝えしたいのは、「ザ・カスク・イズ・キング」、つまり「樽が王様である」ということです。

「ザ・カスク・イズ・キング」というのは私が考えたフレーズです。キャンベルタウンの某ウイスキー関係者、彼は私の友達で愛すべき友人なのですが(訳注:マー◯・◯ット氏?)が同じことを言っていても、僕が提唱したものと思って聞いてください(笑)

私たちは冷却濾過や着色はしないことと、シングルカスクでボトリングするか、2つか3つの樽のみをブレンドしてボトリング する、ということを徹底しています。カラメル色素で着色したことは、絶対に、全く、一度もありません。

同じように着色を全くしていない徹底した会社を、私はもう一つ知っています。それはインデペンデントボトラーとして凄く有名なアデルフィです。彼らは私たちのマネをしたわけではないのですが(笑)全く着色はしていません。

ロウカスクは最後に味わっていただくとして、2番目は「ブラックスネーク」を味わっていただきたいと思います。「ブラックスネーク」とはブラックアダーの社名からきています。

このウイスキーを、一番最初に手にした国がどちらか、想像のつく方はいらっしゃいますか? ラベルのところにヒントがあるんですが、このウイスキーを初めに手にした国は日本です。商品としては有名だと思うんですが、みなさまのバーであまりオーダーされてないとも思うんです。

このエディションは VAT 9 のもので、私たちはセカンドヴェノムと呼んでいます。ヴェノムというのは、蛇から出てくる毒のことです。みなさん、僕のジョークを理解していただけるかとは思うんですけれど、あまりウケてないようですね(笑)つまり VAT 9 から、2回目にボトリングされたウイスキーです。この VAT 9 という樽は、日本だけの独占販売です。

このブラックスネークを造る時は、3つのバーボン樽で熟成したウイスキーをブレンドして、シェリーのオロロソかPXの樽に詰め、その後1年寝かせます。

それから、中身の3分の2を樽から払い出して、ボトリングします。(訳注:これがファーストヴェノムになります)

3分の1はそのままシェリー樽の中に残しておいて、そこにまたバーボン樽からのウイスキーを補充して、1年から1年ちょっと寝かせて、味が美味しくなったら、その中身の3分の2をボトリングします。(訳注:これがセカンドヴェノムです)

またバーボン樽2つ分のウイスキーを、そのシェリー樽に補充して、寝かせます。(訳注:サードヴェノムになります)

そのウイスキーは、必ずスコットランドの某蒸留所のものを使います。私はバーボン樽のファーストフィルのモルティさとスイートな味わいが一番好きです。

私たちのところには25樽のブラックスネークがあるんですけど、それはちょっとしたシェリーのソレラのような感じです。大体シェリーの樽は4〜5回ほど熟成を繰り返すのですが、同じように4〜5回熟成させたら、また新しいシェリーの樽を使います。

今から15年経ったときには…そのときには私はここにいないと思うんですけれど…僕の年齢について笑わないでください(笑)そのときにも最初に詰めたウイスキーは、まだ樽の中に少し残っているわけです。そして2回目、3回目にボトリングされたウイスキーも、少し残っているというわけです。これは僕が最初にブラックアダーで発案した手法です。他の会社はまだこういった試みをしていないと思います。

日本国内で、日本のニーズ(需要)がどのくらいか、ご存知の方いらっしゃいますか?1億2千万人の日本人の中には、一つしかニー(膝)がない方もいらっしゃると思います(笑)

日本酒というものをご存知の方もいらっしゃいますね?みなさん、日本シューズをお履きになっている。私はイギリシュー出身です(笑)

台湾では2,300万人の方がいて、ブラックアダーは台湾に向けて、毎年大体10樽くらいのブラックスネークを輸出しているので、みなさんも頑張って輸入して飲んでください(笑)

ブラックスネークの姉妹ブランドで「レッドスネーク」というブランドがあります。「レッドスネーク」は同じシングルモルトウイスキーなのですが、通常はファーストフィルのバーボン樽で熟成されていて、たまにラムカスクでフィニッシュしています。なので、ブラックスネークに感じられるシェリー樽の感じと、レッドスネークで感じていただけるバーボン樽の甘さのような香りを、みなさんは比較しながら楽しんでいただける思います。

バーボン樽のバーボンが蒸留される、アメリカのケンタッキーという南の州などの畑で働くような人たちのことを、首周りが陽に焼けて赤くなることから「レッドネックス」と呼ばれていたんですね。なので、僕はレッドスネークという名前を付けました。この2つのラベルは、僕の義理の息子、私の娘ハンナの夫がデザインしたものです。正直、コストはかなり節約できました(笑)彼はディズニーなどの大きな会社と取引して、今ロンドンで働いています。

 3つ目のウイスキーは「オールドマン・オブ・ホイ」というブランドです。これはオークニー島のウイスキーで、もう25年近く、この名前でボトリングしています。このラベルに描いてある岩が「オールドマン・オブ・ホイ」と呼ばれています。これはオークニー島という、スコットランドの北にある島の岩で、大体150m弱くらいの巨石です。2つ足があったのですが、1860年くらいに岩が削られてしまった。

このウイスキーは、12年熟成で64.7%、ロウカスクでボトリングされています。2000年に、私は「ロウカスク」を始めました。ロウカスクという手法をとり始めた理由は、濾過をすればするほどウイスキーの個性やフレーバーが失われてしまうからです。

他の会社も「冷却濾過をしません」という会社もあると思うんですけど、私たちは細かい濾過もしていません。他の冷却濾過をしていない会社でも、ブラックアダーよりも濾過の度合いは細かいと思います。どうしたら本当に粗い濾過しかしていないことをみなさんに証明できるかなと考えまして、それで考えついたのが樽の中にある沈殿物あるいは炭化物を、そのままボトリングしてしまうということです。

「ロウ」というのは「フレッシュな、生の」という意味です。それでロウカスクという、フレッシュな、自然の、という名前をつけることにしました。ウイスキーのビジネスで重要なことは、ウイスキーに対する尊敬と、ウイスキー造りに関して独自のことをやりたいと思うこと、コピーや真似は絶対にしないということ。幸運なことに、ロウカスクという手法も他の蒸留所やボトラーに真似されたことはありません。

台湾のみなさんはロウカスクをすごく好きになってくれて、台湾でもっとも有名なシングルモルトのブランドになったのですが、日本でも同じだろうと思いますので、みなさんにロウカスクのウイスキーをもっとお買い求めいただけるのではないかと思ってます(笑)

みなさんには、今日紹介したウイスキーを楽しんでいただけたら嬉しいです。後2、3分しか残っていないんですけど、質問があればお答えします。

【質疑応答】

Q:ブラックスネークは、どちらの蒸留所のウイスキーですか?

A:スコットランドです!(一同笑)

実はレッドスネークも同じ蒸留所です。全てのスコッチウイスキーは、蒸留も熟成も全てがスコットランドで行われています。私の個人的な意見では、世界でトップ5に入る蒸留所だと思います。(訳注:ロビン氏からの厳命で名前こそ出せませんが、有名でコレクターも多い、本当に人気のある蒸留所です)

インドのバンガロールにある蒸留所は、幸運にも私たちにボトリングさせてくれまして、みなさんもその魅力を体感されるかと思います。

そして、これから親愛なるバート氏がベルギー流のウイスキーを披露してくれると思います。チョコレートではないですよ(笑)

どうもありがとうございました。

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 【アムルット編】

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 のアムルット編として、セミナー全文を掲載します。

セミナーに参加できなかった方必見です!


ガイアフロー BASA
プロフェッショナル・セミナー in 東京
【アムルット編】
話し手:アムルット アンバサダー
ガンガ・プラサド氏


本日は、お越しくださいましてありがとうございます。また、アムルットのウイスキーのテイスティングをしていただけること、感謝しています。

先ほどのブラックアダー&アスタモリスのセミナーから、引き続き参加している方もいらっしゃいますね。彼らのセミナーでは、ウイスキーの取り扱いの難しさや、どうやって樽を選ぶかなどを知ることができたと思います。インデペンデントボトラー(独立瓶詰め業者)のセミナーですからね。

私は、蒸溜所の人間として、彼らとは違った形でウイスキーを紹介したいと思います。
ボトラーは、自分たちで樽を選び、ボトリングしていますが、私たちはそういうわけにはいきません。そういったことを、スライドで紹介していきます。アムルット蒸溜所について、どのような経緯でウイスキー事業に乗り出したかなども説明いたします。
そして、製造している中から、3つの特徴あるウイスキーをテイスティングしましょう。皆さんを、退屈させないように頑張ります。

アムルットの蒸溜所は、1948年に建てられました。1947年までは、イギリスの統治下にありましたから。

1948年に、ラダクリシュナ・ジャグデールが率いる、ジャグデール・グループによって、アムルットは設立しました。初期のアムルットは、ジャグデールが薬剤師だったこともあって、製薬会社として始まりました。

みなさんご存知の通り、咳止めシロップには、少量のスピリッツが含まれています。そのようなスピリッツを、もっとたくさん作ってお酒として販売しよう、というところからアムルットのお酒作りはスタートしています。

1950年代に、ラムの蒸留を始めました。これは、インド国内のみで流通していたものです。

1970年には、地元のぶどうを使ったブランデーの製造をしていました。季節限定のブランデーで、「バンガロールブルー」という名前です。

この写真は、アムルットの会長であった、故ニーラカンタータ・ラオ・ジャグデール氏。彼は「インドのシングルモルトウイスキーの生みの父」です。

1980年に、ウイスキー製造がスタートしました。地元のブレンデッドウイスキーのためです。当時は、シングルモルトについての知見がありませんでしたし、またインド市場自体にシングルモルトの需要もありませんでした。

さて、ウイスキー製造の初期の段階、まだまだ樽が熟成途中の時の話です。当時は、他に何をしたらいいかわかりませんでした。というのも、インド市場においては、ブレンデッドの製品が大半を占めていたためです。

2002年に、ラクシット・ジャグデールはニューカッスルに行き、そこからいくつかサンプルを取ってきました。ラクシットは、現在は偉大な会長であり、社長でもあります。
そのサンプルをロンドンのバーに持ち込んだラクシットは、バーテンダーやお客様に試してもらいました。その感想を聞くと、「18年ものだよ」「いやいや、10年もののスコッチだよね?」というようなものでした。

つまりアムルットのウイスキーは、それほどまでにクオリティの高いものだということ。それで私たちは、シングルモルトとして商品化することを決めたのです。

そして、2004年。最初のアムルットのシングルモルトウイスキーが発売されました。スコットランドのグラスゴー、カフェインディアというバーでのことでした。

ここで、ウイスキーのテイスティングをしてみましょう。
グラスゴーで2004年にお披露目された、シングルモルトウイスキーです。

アムルット インディアン シングルモルト ウイスキー 46%
AMRUT SINGLE MALT INDIAN WHISKY 46%

バートやロビンが言っていたように、私もこのウイスキーについて、(香りを嗅いで)「バナナのような香りがする」などといったことをお伝えするつもりはありません。みなさんの嗅覚や、味の感じ方は、それぞれ異なるからです。

例えば、私がインディアンスパイスの香りといっても、インディアンスパイス自体を知らなければ、なんのことかわかりませんよね。私も、日本固有の何かの味わいについては、多分わからないと思います。
ですから、まずはみなさん自身の、嗅覚と味覚をもとに、ウイスキーを味わって見てください。そして、それがどんな味だったのか、教えてもらえますか?

このウイスキーは、インドで作られた麦芽を100%使用したものです。
この麦芽は六条大麦で、かなりタンパク質も多く、また繊維質も豊富に含まれています。スコットランドの麦芽は、二条大麦です。

このような違いがあるのですが、みなさんどう思われますか?教授と話しているセミナーではないので、気軽に飲んで、感想を教えてください。

2004年にお披露目をしたのですが、誰もインディアンウイスキーを飲もうとしなかったので、かなり大変でした。インド産ということで、正しくないイメージが先行してしまったのです。ブレンデッドではないかとか、ウイスキーと言いつつも、実際はモラセスなどを使用したスピリッツではないか、というように。だから、飲んでみようという人がいなかったんです。だって、インドがシングルモルトのウイスキーを造れるとは思いもしませんからね。

アムルット蒸溜所は、初めてEUに輸出することを認められた、インド初の企業となりました。先ほどもお伝えしましたが、最初はブレンデッドウイスキーだと思われて、なかなか試してもらうことができませんでした。

そんな中、2009年に、アムルットのフュージョンが、ウイスキーバイブルで「世界で最も優れたウイスキー」として第3位の地位を獲得しました。そして、モルトマニアックスなどでも多くの賞を獲得していくのです。モルトマニアックスには、私の友人でもある、アスタモリスのバート氏も在籍していましたね。
コンテストなどを通じて、アムルットの美味しさが知られるようになりました。アムルットは、全く違う背景を持った、今までと異なる味わいのウイスキーだということです。

そのウイスキーを試してみましょう。まず香りを嗅いで、味わう。どんな感じか、教えてください。

アムルット フュージョン 50%
AMRUT Fusion 50%

「フュージョン」とは、コンビネーション(融合)を意味します。ピーテッドモルトと、アンピーテッドモルトのコンビネーションです。
アンピーテッドのものは、インド産の麦芽。ピーテッドのものは、スコットランド産の麦芽です。というのも、インドにはピートがないからです。

アンピーテッドのタイプがお好きな方もいますし、ピーテッドのタイプがお好きな方もいますよね。新しいものを試してみたい方、変わったものを飲んでみたい方もいらっしゃいます。ヘヴィリーピーテッド以外であれば、ね。

そういうところで言えば、フュージョンはいわば架け橋のようなウイスキーだと思います。ピーティーな味わいがお好きでなくとも召し上がっていただけるよう、ピーテッドのウイスキーの使用量は25%にとどめました。それ以上だと、味わいがきつくなりすぎてしまいます。だいたい35ppmくらいですかね。

参加者:「35ppmくらいというと、だいたいボウモアと同じくらいということですか?」

そうですね。だいたい同じレベルです。正確なところは確かめようがありませんが、35〜45ppmくらいと考えています。

フュージョンのリリースから、段々と認知度も上がってきました。インドのシングルモルトもなかなかいいじゃないか、と言ってもらえるようになったのです。今では、46以上の国々で販売をしています。

このような積み重ねが、アムルットには必要でした。しかし、私たちインド人はこだわりが強い人間です。
スコットランド人だったら「OK、これでもういいかな」と思ったり、ヨーロッパの人のように「ある程度売れてるからいいや」となるかもしれませんが、インド人はそうはなりません。

アムルット蒸溜所もその例にもれず、クレイジーで、実験的気質で知られています。スコットランドの蒸溜所には、毛嫌いされています。なぜなら、アムルットの実験は多岐に渡るから。スコットランドではできない、インドでしかできないウイスキー造りをしているのです。

次は、麦芽について。私たちのクレイジーな実験については、また後ほどお話しします。
インド産の大麦は、パンジャーブ州やラジャスタン州で栽培されます。デリーで精麦を行い、トラックで3000㎞離れたバンガロールまで運んできます。バンガロールは、アムルットのある場所です。

シングルモルトに欠かせないものは、大麦と酵母と水です。スコットランド産の二条大麦と、インド産の六条大麦の違いもご覧ください。ピーテッド麦芽は、スコットランドのインヴァネスから運ばれてきます。スコットランドの機械で収穫された大麦は、スコットランドのピーテッド麦芽になります。インド人に収穫された大麦は、(最初に試飲した)インディアンシングルモルトのための麦芽となります。

こちらが、みなさんご存知のピートです。ウイスキーに、スモーキーな香りを与えるものですね。ピートは、インドにはありません。寒い地方にしか存在しないのです。

そして、ウイスキーの製造工程について。粉砕、糖化、発酵、蒸留の工程です。このスライド自体は、韓国でのアムルットのリリースの際に、プレゼン資料として作ったものです。日本語の部分は、大航さん(ガイアフロー代表中村大航)が5分くらいで付けてくれました(笑)

これは新しい蒸溜所です。
55ヶ国くらいの国から需要があるのですが、問題も出てきました。需要に応えるだけの十分な量の在庫がない、ということです。アムルットがこんなにも成功するだなんて、思ってもみませんでしたから。

昨年、新しい蒸留所が稼働し始めました。2倍の生産能力でもまだ足りないと思ったので、3倍の生産能力になるようにしました。(新しい蒸留所には)初留の蒸留機と再留の蒸留機を2基ずつ設置しています。従来の蒸溜所には、初留と再留で1基ずつ。それに2基ずつ新設したので、合計で3倍の能力を発揮できるようになっています。

アムルットでは、さまざまな樽を熟成に使用しています。それはインドの気温が関係しています。
アムルットは海抜3,000フィート(約900m)で、夏は大体20℃〜40℃、冬場でも17℃〜30℃ほどと、冬とは言えないような気候です。6月〜8月には、降水確率が85%、平均的な湿度は40%になります。

最近は、気候の変動が激しくなっています。台風が来たり、あるいは海の方から強い風が吹いたりします。貯蔵庫の近くまで、雨水が溜まってしまうなんていうこともありました。

アムルットでクレイジーで実験的なことができる理由は、この気候のおかげです。特徴的な気候のため、熟成が早く進むのです。
「エンジェルズシェア」という言葉を聞いたことがありますか?あるいは「蒸散」とか。
毎年、樽に入ったウイスキーは蒸散していきます。スコットランドでは1%〜2%、アメリカだと5%〜6%くらいの割合です。アムルットの場合は、毎年10%〜12%がエンジェルズシェアとして失われます。

エンジェルズシェアが大きいため、ウイスキーは早く熟成しますが、その分失われる量も多いのです。ボトリングするのに、12年も待たなくていいという利点はありますがね。

熟成環境の比較も見てみましょう。どうですか?スコットランドとアメリカ、そしてインドのアムルットの比較です。3年熟成でも、スコットランドではあまり減っていませんが、インドのアムルットだとほとんど半分なくなってしまうのです。

(スライドでの商品紹介)
次のスライドは、インディアン・シングルモルトです。先ほどお試しいただいたものですね。
そして、ピーテッドタイプのインディアン・シングルモルト。スコットランド産の麦芽を使用しています。
それからアムルットのフュージョン。

アムルットでは、だいたい35種類の商品ラインナップがあります。限定の商品は、大体4年ごとにリリースされます。
例えば、こちらの「アムルット トゥー・コンチネント」と呼ばれる商品。限定品のためここにはありませんが、「2つの大陸」を意味しています。まず最初にインドで蒸留してバーボン樽で熟成、その後スコットランド出荷し、さらに熟成させるのです。インドで3年間熟成させ、またスコットランドで3年間熟成させます。

次は、カダンハムと呼ばれるシングルモルトウイスキー。私たちのクレイジーさの証明とも言えるウイスキーです。
90%がインド産麦芽のウイスキー、10%がスコットランド産のピーテッド麦芽のウイスキーを使用しています。まず3年半バーボン樽で熟成させ、その後6ヶ月間をラム樽で、次の6ヶ月間はブランデー樽で、最後の6ヶ月間はシェリー樽で熟成させました。いろいろな種類の樽を経て、ボトリングされたウイスキーです。

アムルット カダンハム シングルモルト ウイスキー 50%
AMRUT Kadhambam Single Malt Whisky 50%

もう一つ紹介したいウイスキーは、ナーランジというウイスキーです。みなさんのテーブルにもありますね。

アムルット ナーランジ シングルモルトウイスキー 50%
AMRUT NAARANGI SINGLE MALT WHISKY 50%

ナーランジというのは、さまざまな国の言葉でもオレンジを意味しています。みなさん「どうやってオレンジのウイスキーが出来るの?」と疑問に思うようですね。

まずは、スペインからオロロソシェリーを輸入します。中身が入ったシェリーの樽に、オレンジの皮も加えます。そして2年間、シェリーを熟成させるのです。その後、樽からシェリーとオレンジを払い出し、空になったところに3年熟成のアムルットのウイスキー入れます。そしてさらに2年間熟成させます。合計で5年熟成のウイスキーです。このような実験的な試みも、アムルットがクレイジーと言われる所以です。

35アイテムもあるアムルットの商品を、私は20ヶ国あまりに紹介をしています。もちろんどの商品のこともきちんと覚えているのですが、それぞれの特徴を捉えられるように独自に名前をつけています。ナーランジは、「瓶に入ったオールドファッションド」。
グラスに氷を入れて、ナーランジを注ぎ、レモンを加えてみてください。素晴らしいオールドファッションドが愉しめますよ。
35ものウイスキーのラインナップから、先ほどみなさんにお試しいただいたように、ご紹介していくのは大変光栄なことです。そのために、ひとつひとつの個性を捉えるようにしています。

みなさんが味わったことが全てです。どのように感じたか、教えていただけますか?

参加者:「最初は、オレンジのフレーバーがくるけど、後から、モルトの香りがくるように感じる。」

ありがとうございます。素晴らしい。
「アムルットでは、長熟のウイスキーはありますか?」と聞かれることがあります。アムルットの長熟のウイスキーは、グリーディーエンジェルズ(欲張りな天使)という名前です。
これは特別なアイテムで、まず10年熟成がリリースされ、次に8年熟成、そして1バッチのみですが12年熟成をリリースしています。

グリーディーエンジェルズの12年熟成が、1バッチだけだったのには理由があります。10年以上のウイスキーの熟成をするには、アジアの温暖な気候はとても危険を孕んだものだからなんです。

あ、もう時間切れ?もう少し話せますか?よかった。
さて最後に、もう少しグリーディーエンジェルズのことをお伝えします。12年熟成には10樽の樽を使用したのですが、ボトリングされたのは、たった106本。このように(12年でも)ウイスキーが蒸発してしまうということが、温暖な気候で熟成されることのリスクなのです。

時間が来てしまったので、このへんで終わりにしたいと思います。みなさんが、インドのウイスキーを楽しんでいただけたなら、光栄に思います。ありがとうございました。

中村大航:「ガンガさん、どうもありがとうございました。インドのアムルット、最初に日本で紹介された時は怪訝な感じでみなさんみていたと思うんですけど。今日、飲んでみていかがでしょうか?造りもトラディショナルで、造っている設備なんかも、全部インド製の機械なんですね。ものすごく自分たちの造りに誇りを持ってやっていて。実際、いまヨーロッパやアジアの国々で、アムルットは大人気なんです。例えばこのインディアンや、フュージョンはスタンダード商品なので、インド国内でも販売しています。ただ、ナーランジなどの他の限定品のボトルは、インド国内ではほとんど販売していなくて、ヨーロッパとかでしか販売していないのです。日本では、一旦スコットランドに行ったものをまた輸入して入れています。うちは、オンラインショッピングサイトに英語で掲載しているんですよ、商品名を。そうすると、ヨーロッパからオーダーが入っちゃう。で、あるだけくれ、と(言われてしまう)。アムルットフィーバーという愛好家のグループがあるんですけど、腕にアムルットのロゴのタトゥーを入れているような熱狂的なマニアな人たちが、今世界中でアムルットの限定的なものに熱狂している。まだまだうちが、日本ではそれを伝えきれていないので、今日はそういう意味では非常にいい機会になったかと思います。」

ひとつだけ言わせてください。アムルットフィーバーというグループは、昔からあるものではないんです。ある一人のファン(デニス・ステッケル)によって立ち上げられたグループです。企業が立ち上げたものでもなく、むしろアムルット蒸溜所自体がメンバーの一人という具合です。グループから申請が来たので、参加させてもらっています。

中村大航:「アムルットフィーバーは、会社とかは全く関係ないファンのグループなんですね。そういうところに彼も入ってくれ、と言われて入っているわけです。私もいつの間にか入れられていたんですけど。そこ専用のボトリングとかもやっていたり。いつも、フェイスブックなどで盛り上がっています。フェイスブックでもグループがあるので、もしよかったら見てみてください。」

大航さんがこのセミナーを開催してくれて、とても楽しかった。そして、参加してくださったみなさま、アムルットのウイスキーを試飲していただいて感謝しています。

(質問)
参加者:「熟成環境が特殊だと思いますが、樽は基本寝かせているのか、一部立てているのか。どのような形で熟成させているのですか。樽の管理の仕方について教えてください。」

基本寝かせる形で熟成させています。

参加者:「高さは?」

1列11段の樽を並べることができます。ほとんどがラック式です。
どうもありがとうございました。

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京開催します!

ウイスキーフェスティバル2019 in 東京の翌日、11月18日(月)。興奮冷めやらぬ中、ガイアフロー取り扱い3ブランド+静岡蒸溜所のセミナーを料飲食店さま限定で開催します!

ブラックアダー&アスタモリスに、アムルット&静岡蒸溜所。
各ブランド45分ずつ、1コマ90分の濃密なセミナー。
個性あふれる味わいを体感してくださいね☆

本日は、ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京のお知らせです。


ガイアフロー
Blackadder
Astamorris
Shizuoka
Amrut
プロフェッショナル・セミナー in 東京
開催します!


■開催日:2019年11月18日(月)
■タイムスケジュール
・13:00〜14:30 ブラックアダー&アスタモリス
(受付12:45〜)
・15:00〜16:30 アムルット&静岡蒸溜所
(受付14:45〜)
■場所:TKP汐留新橋ビジネスセンター「カンファレンスルーム102」
〒105-0004
東京都港区新橋4-24-8 2東洋海事ビル 1F
■対象:飲食業界で働かれている方
(一般の方はご参加いただけません)
・一店舗あたり、2名までご参加いただけます
・当日は、お名刺をご持参の上お越しください
■申し込み方法:WHISKY PORTにて
・セミナー1 ボトラーの部:ブラックアダー&アスタモリス
・セミナー2 蒸溜所の部:アムルット&静岡蒸溜所
 (両方のセミナーに参加される場合は、それぞれお申込ください)
■参加費:無料
■試飲アイテム:1コマ6種(3種×2ブランド)

続きを読む “ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京開催します!”

ブラックアダー&アムルット プロフェッショナル・セミナー in 大阪を開催します!

ウイスキーフェスティバル東京2019も間近!各国から、今年もゲストがやって来ます。
これに合わせ、大阪で飲食業界の「プロ」のみなさまを対象としたテイスティングセミナーを開催することが決定いたしました!

講師を務めるのは、ブラックアダー代表のロビン・トゥチェック氏と、アムルットのブランドアンバサダーであるガンガ・プラサド氏。それぞれのブランドの魅力を、テイスティングを交えて堪能いただけます。

「英語が不安」という方もご安心を。通訳がきっちり翻訳してお伝えします!

本日は、ブラックアダー&アムルット in 大阪プロフェッショナル・セミナー開催のお知らせです。


ブラックアダー&アムルット
プロフェッショナル・セミナー in 大阪
を開催します!


■日時:2019年11月15日(金)14:00〜16:00
(受付13:45〜)
■場所:ハートンホール毎日新聞ビルB1
〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田3丁目4−5
■対象:飲食業界で働かれている方(一般の方はご参加いただけません)
・一店舗あたり、2名までご参加いただけます
・当日は、お名刺をご持参の上お越しください
■申し込み方法:WHISKY PORTにて
(備考欄に店名の記入をお願いいたします)
■参加費:無料
■試飲アイテム:8種(4種×2ブランド)

続きを読む “ブラックアダー&アムルット プロフェッショナル・セミナー in 大阪を開催します!”