ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 【ブラックアダー編】

ガイアフロー BASA プロフェッショナル・セミナー in 東京 (2019年11月19日開催)のブラックアダー編として、セミナー全文を掲載します。


ガイアフロー BASA
プロフェッショナル・セミナー in 東京
【ブラックアダー編】

話し手:ブラックアダー・インターナショナル 
代表 ロビン・トゥチェック氏


こんにちは。今日はお集まりいただき、ありがとうございます。月曜日なのにみなさん、他に行く用事がないのかなと思ってしまいます(笑)

この中には、私がお会いしたことがある方もいらっしゃいますね。あそこにいる男性は色々と樽を集めていますし、彼は私の人生をかなり変えてくれました。私たちはとてもいい友人です。あそこに座っている女性も僕の友達で、お隣に座られている男性も私は知っています。東京にはすごく素晴らしいバーがたくさんあって、みなさん誇りを持ってバーを経営されていると思います。

私に会ったことがあるよ!って方はいらっしゃいますか?もしよかったら、手をあげてください。(多くの方の手が挙がりました)
もう一度会いに来てくれてありがとうございます(笑)

 今日はみなさんに3つのブラックアダーのウイスキーを用意しました。私の個人的な好みがどれかは今回は紹介しませんけど、僕が好きなブランドのものを紹介したいと思います。

私にはすごく単純で、でも大事にしている哲学があります。「人生は楽しいものであるべき」という哲学はさておき、「幸せに生きる」っていうことももちろんですが、人生には無駄に過ごす時間は無いのです。人生は一日一日を楽しく生きるべきです。なぜなら、いつの日か、そうなるからです。

人生の哲学はこの辺にしまして、ブラックアダーの哲学をお教えしたいと思います。僕の人生は、ウイスキーを飲みながらスタートした訳ではありません。赤ちゃんはウイスキーを飲みませんからね(笑)

僕は最初に子どものコミックを、作るような会社でキャリアをスタートしました。子ども用のアニメの脚本を書いたり、ジョークを考えたりしていました。子ども用のテレビ番組の制作にも携わって、10代向けのスポーツなどを特集した雑誌を作っていました。

僕はこの部屋でただ一人、ABBAに会ったことのある人物だと思います。ロンドンに住んでいる時には、ロット・スチュワートのすごくいい車にも乗らせてもらいました。僕は昔、大物スターにインタビューする機会をたくさん持っていました。そういった大物セレブと仕事をする機会がありました。僕もそのうちの一人になったというわけです。

僕はユーモアがとても好きなのですが、もし笑えないようであれば、この後のベルギー人のジョークでは、もっと笑えないでしょう(笑)アムルットのガンガがすごく笑っていますね。

その後、アルコール関係の雑誌の作成に携わっていました。「ドリンクセンター・ナショナル」という雑誌でした。アシスタント編集者として活動して、ワインなどを特集していました。編集者の方もフランスやロンドンに、ワインの取材に行っていたして、その後は蒸留酒を特集する係になりました。

もうこの時、既にウイスキーには興味があったんですけど、1992年、皆さんが生まれる前のことだと思うんですけど(笑)グレングラント蒸留所を訪ねました。蒸留所やウイスキーの会社のインタビューで、セールスマネージャーの方ともたくさんお会いしました。その前にもそういった方々と会ってはいたんですけれども、このグレングラント蒸留所で、初めて樽からそのままウイスキーを味わうことになりました。

あまりのおいしさに本当に驚きました! その時までは、飲んでいたウイスキーは販売する商品として濾過されたものも多かったのです。そしてカラメル色素で着色されたものを、僕は口にしていました。ただグレングラント蒸留所で飲んだものは、本当に僕に衝撃を与えました。

その後、私はヘッドハンティングされて、広告の会社に務めることになるんです。その時はマッカランであったり、ドランブイだったり、ワインなどを担当していました。それから、私は自分の会社を立ち上げることになり、ワインと蒸留酒を取り扱うことになりました。その時の取引先のひとつはタムナヴーリンです。

そして私は、「マスターオブモルト」というコンペティションを開く運びとなったのです。これはタムナヴーリンのモルトウイスキーとも関連がありました。ジョン・ラモンド氏が、そのコンペティションの優勝者となりました。

私は「モルトウイスキー・ファイル」というウイスキーに関する本も書いておりまして、味覚の鋭いジョンにウイスキーのテイスティングコメントを書いてもらい、私はウイスキーの歴史や背景などの部分を書いて本を出しました。その自分の本の中ではウイスキーに関する評価はつけず、ウイスキーの個性を引き出すような内容を書いていました。ジョンも含めて自分も、ウイスキーというのは人それぞれ好みが分かれると考えております。

本は再販もされまして、日本語にも訳されています。私はまた改訂版にも取り掛かる予定であります。今後にご期待ください。ただ、ウイスキーを売り込むのに時間をとられて忙しいので、なかなか取りかかれていないのですが(笑)

その後、私は「マスターオブモルト」という会社を立ち上げまして、ウイスキーを英国で売り出しました。「マスターオブモルト」のラベルで、いくつかのウイスキーを販売しました。その会社に関わっていた他のメンバーと、経理面で問題がありまして、意思の疎通もなかなか図れなかったので、1995年にその会社を辞任しました。

そして同年の4月1日に、ブラックアダー・インターナショナルをスタートしました。それで今ここに私がいるのです。日本に来たのは飛行機で飛んできたのですが(笑)これまでに60〜70回、日本に飛行機で来ています(笑)パスポートもパンパンになったので、ページをかなり追加しています。

 ここでウイスキーを飲み始めたいと思います。私は普段ピーティーなものは最後に持ってくるようにしているのですが、今回、「パフアダー」が46%とかなりアルコール度数が低いので、はじめに持ってきています。

みなさんにいつもお伝えしていることですが、まずは香りを嗅いでください。ノージングという言葉をご存知じゃない方もいらっしゃると思いますけど、どういう風にするか、今からご紹介します。

ウイスキーを手に取っていただいて、2つの動作を今から紹介します。ちょっと顔を傾けて、グラスを顔の前に持ってきて、口のあたりで香りを嗅いでください。ウイスキーの香りをもうちょっと引き出したかったら、グラスの上に手を置いて蓋をして、1分ほど持っていてください。

「パフアダー」は複数のシングルモルトウイスキーをブレンドしたものなんですが、そのうちの一つがピーテッドです。これはみなさんに、ピートのふわっと(訳注:英語ではパフと表現する)香ってくる香りを楽しんでいただきたいと考えています。

この後、また香りを嗅いでいただきます。グラスの上に被せてある手を外してください。被せてない方の手を外すと落ちてしますので(笑)こうすることで、もっと香りを感じられると思います。アルコールが温められることによって香りが立ち上ってくるのです。後でアムルットのガンガが、温暖な気候で造られたウイスキーとその香りの関係性について話してくれるかと思います。

ウイスキーを味わう時は、少し口に含んだ上で、舌触りや味わいを楽しんでいただけたらと思います。私たちはこのウイスキーを「パフアダー」と呼んでいます。「パフ」というのは煙のことで、「ブラックアダー」は黒い蛇という意味です。私たちの通常のボトルにも黒い蛇が描いてありますが、台湾の輸入業者の人は、これを「悪魔の精子」という風に呼んでいます。彼はすごくユーモアな方ですね(笑)

もし一回味わっていただいて、味が強いようだな、と思ったら、水を1滴か2滴くらい足していただくこともできます。ブラックアダーのウイスキーを、僕は普通にストレートで楽しむ時もあれば、水を少し足して飲む時もあります。気分にもよるので、同じウイスキーでもたまに薄めることもありますし、そのまま飲むこともあります。ブラックアダーのウイスキーに水を足していただいても、全く問題はありません。

ブラックアダーにはすごく特別な調査チームがあるんですが、あるときブラックアダーのウイスキーにコカコーラを足して飲んでいる人々がいる!という調査結果が判明したことがあって、私たちは彼らを罰したいと思いました(笑)

コカコーラを別の飲み物に足してくださっても結構なんですけど、みなさまにはモルトの、特に樽の香りを楽しんでいただきたいと思っております。日本ですごく有名で人気な飲み方に、ハイボールがあると思います。特に暑い日には、いいと思います。パフアダーのもう一つの美味しい飲み方は、ハイボールにした時にソーダとすごく合うところです。

 次のウイスキーをご紹介したいと思います。みなさまに今日お伝えしたいのは、「ザ・カスク・イズ・キング」、つまり「樽が王様である」ということです。

「ザ・カスク・イズ・キング」というのは私が考えたフレーズです。キャンベルタウンの某ウイスキー関係者、彼は私の友達で愛すべき友人なのですが(訳注:マー◯・◯ット氏?)が同じことを言っていても、僕が提唱したものと思って聞いてください(笑)

私たちは冷却濾過や着色はしないことと、シングルカスクでボトリングするか、2つか3つの樽のみをブレンドしてボトリング する、ということを徹底しています。カラメル色素で着色したことは、絶対に、全く、一度もありません。

同じように着色を全くしていない徹底した会社を、私はもう一つ知っています。それはインデペンデントボトラーとして凄く有名なアデルフィです。彼らは私たちのマネをしたわけではないのですが(笑)全く着色はしていません。

ロウカスクは最後に味わっていただくとして、2番目は「ブラックスネーク」を味わっていただきたいと思います。「ブラックスネーク」とはブラックアダーの社名からきています。

このウイスキーを、一番最初に手にした国がどちらか、想像のつく方はいらっしゃいますか? ラベルのところにヒントがあるんですが、このウイスキーを初めに手にした国は日本です。商品としては有名だと思うんですが、みなさまのバーであまりオーダーされてないとも思うんです。

このエディションは VAT 9 のもので、私たちはセカンドヴェノムと呼んでいます。ヴェノムというのは、蛇から出てくる毒のことです。みなさん、僕のジョークを理解していただけるかとは思うんですけれど、あまりウケてないようですね(笑)つまり VAT 9 から、2回目にボトリングされたウイスキーです。この VAT 9 という樽は、日本だけの独占販売です。

このブラックスネークを造る時は、3つのバーボン樽で熟成したウイスキーをブレンドして、シェリーのオロロソかPXの樽に詰め、その後1年寝かせます。

それから、中身の3分の2を樽から払い出して、ボトリングします。(訳注:これがファーストヴェノムになります)

3分の1はそのままシェリー樽の中に残しておいて、そこにまたバーボン樽からのウイスキーを補充して、1年から1年ちょっと寝かせて、味が美味しくなったら、その中身の3分の2をボトリングします。(訳注:これがセカンドヴェノムです)

またバーボン樽2つ分のウイスキーを、そのシェリー樽に補充して、寝かせます。(訳注:サードヴェノムになります)

そのウイスキーは、必ずスコットランドの某蒸留所のものを使います。私はバーボン樽のファーストフィルのモルティさとスイートな味わいが一番好きです。

私たちのところには25樽のブラックスネークがあるんですけど、それはちょっとしたシェリーのソレラのような感じです。大体シェリーの樽は4〜5回ほど熟成を繰り返すのですが、同じように4〜5回熟成させたら、また新しいシェリーの樽を使います。

今から15年経ったときには…そのときには私はここにいないと思うんですけれど…僕の年齢について笑わないでください(笑)そのときにも最初に詰めたウイスキーは、まだ樽の中に少し残っているわけです。そして2回目、3回目にボトリングされたウイスキーも、少し残っているというわけです。これは僕が最初にブラックアダーで発案した手法です。他の会社はまだこういった試みをしていないと思います。

日本国内で、日本のニーズ(需要)がどのくらいか、ご存知の方いらっしゃいますか?1億2千万人の日本人の中には、一つしかニー(膝)がない方もいらっしゃると思います(笑)

日本酒というものをご存知の方もいらっしゃいますね?みなさん、日本シューズをお履きになっている。私はイギリシュー出身です(笑)

台湾では2,300万人の方がいて、ブラックアダーは台湾に向けて、毎年大体10樽くらいのブラックスネークを輸出しているので、みなさんも頑張って輸入して飲んでください(笑)

ブラックスネークの姉妹ブランドで「レッドスネーク」というブランドがあります。「レッドスネーク」は同じシングルモルトウイスキーなのですが、通常はファーストフィルのバーボン樽で熟成されていて、たまにラムカスクでフィニッシュしています。なので、ブラックスネークに感じられるシェリー樽の感じと、レッドスネークで感じていただけるバーボン樽の甘さのような香りを、みなさんは比較しながら楽しんでいただける思います。

バーボン樽のバーボンが蒸留される、アメリカのケンタッキーという南の州などの畑で働くような人たちのことを、首周りが陽に焼けて赤くなることから「レッドネックス」と呼ばれていたんですね。なので、僕はレッドスネークという名前を付けました。この2つのラベルは、僕の義理の息子、私の娘ハンナの夫がデザインしたものです。正直、コストはかなり節約できました(笑)彼はディズニーなどの大きな会社と取引して、今ロンドンで働いています。

 3つ目のウイスキーは「オールドマン・オブ・ホイ」というブランドです。これはオークニー島のウイスキーで、もう25年近く、この名前でボトリングしています。このラベルに描いてある岩が「オールドマン・オブ・ホイ」と呼ばれています。これはオークニー島という、スコットランドの北にある島の岩で、大体150m弱くらいの巨石です。2つ足があったのですが、1860年くらいに岩が削られてしまった。

このウイスキーは、12年熟成で64.7%、ロウカスクでボトリングされています。2000年に、私は「ロウカスク」を始めました。ロウカスクという手法をとり始めた理由は、濾過をすればするほどウイスキーの個性やフレーバーが失われてしまうからです。

他の会社も「冷却濾過をしません」という会社もあると思うんですけど、私たちは細かい濾過もしていません。他の冷却濾過をしていない会社でも、ブラックアダーよりも濾過の度合いは細かいと思います。どうしたら本当に粗い濾過しかしていないことをみなさんに証明できるかなと考えまして、それで考えついたのが樽の中にある沈殿物あるいは炭化物を、そのままボトリングしてしまうということです。

「ロウ」というのは「フレッシュな、生の」という意味です。それでロウカスクという、フレッシュな、自然の、という名前をつけることにしました。ウイスキーのビジネスで重要なことは、ウイスキーに対する尊敬と、ウイスキー造りに関して独自のことをやりたいと思うこと、コピーや真似は絶対にしないということ。幸運なことに、ロウカスクという手法も他の蒸留所やボトラーに真似されたことはありません。

台湾のみなさんはロウカスクをすごく好きになってくれて、台湾でもっとも有名なシングルモルトのブランドになったのですが、日本でも同じだろうと思いますので、みなさんにロウカスクのウイスキーをもっとお買い求めいただけるのではないかと思ってます(笑)

みなさんには、今日紹介したウイスキーを楽しんでいただけたら嬉しいです。後2、3分しか残っていないんですけど、質問があればお答えします。

【質疑応答】

Q:ブラックスネークは、どちらの蒸留所のウイスキーですか?

A:スコットランドです!(一同笑)

実はレッドスネークも同じ蒸留所です。全てのスコッチウイスキーは、蒸留も熟成も全てがスコットランドで行われています。私の個人的な意見では、世界でトップ5に入る蒸留所だと思います。(訳注:ロビン氏からの厳命で名前こそ出せませんが、有名でコレクターも多い、本当に人気のある蒸留所です)

インドのバンガロールにある蒸留所は、幸運にも私たちにボトリングさせてくれまして、みなさんもその魅力を体感されるかと思います。

そして、これから親愛なるバート氏がベルギー流のウイスキーを披露してくれると思います。チョコレートではないですよ(笑)

どうもありがとうございました。