2024年2月23日 SABAセミナーレポート#3 ブラックアダー

第二部のセミナーはブラックアダー&アスタモリスのボトラーズ部門。ブラックアダーは今回、ロビン・トゥチェック氏と息子のマイケル・トゥチェック氏が2人で登壇する、初めての父子鷹スタイルで行いました!

みなさんこんにちは、ブラックアダーのセミナーへようこそ。皆様にお会いできて非常に嬉しく思っています。
まず最初に私から、弊社の基本的なバッグラウンドをお話ししましょう。

ブラックアダーのルーツとポリシー

私たちは、シングルモルトウィスキーをできる限りピュアな状態でボトリングすることを心がけている、インディペンデントボトラーです。
1982年、ここにいるマイケルがまだ幼かった頃のことです。私は、ドリンクス・インターナショナルというところでスピリッツのマーケティングやPRをしたり、本を出版したりしていました。その時に、スペイサイドのさまざまな蒸留所を訪れてインタビューをしていたのですが、そのうちのひとつであるグレングラント蒸留所に行った時のことです。

そこには非常に美しい庭園と、泉がありました。ディスティラリーマネージャーは私をその庭の中に連れて行き、その泉のそばにある金庫のようなものの中から、グラスとボトルを取り出しました。そしてボトルからウイスキーをグラスに注ぎ、泉の水を少し加えました。

私はそのウイスキーを、少しずつ味わってみました。それは、衝撃的な体験でした。「こんなに美味しいウイスキーは味わったことがない!」
グレングラント蒸留所で出されたものだから、グレングラントのウイスキーなのだろうとは思いましたが、私がこれまで飲んだことのあるグレングラントとは全く違いました。

「これは一体、なんですか?」私は尋ねました。すると、マスターディスティラーは「グレングラントの10年ものです…樽から出したばかりの」と言いました。
私はここで、このような樽から出したままのピュアなウイスキーの素晴らしさを知り、こんなウイスキーだけを飲みたい、世の中に広めたいと思いました。

その後、私はジョン・ラモンドの協力を得て「モルト・ウイスキー・ファイル」を出版しました。そして1995年、ついに自分の会社としてブラックアダー・インターナショナルを設立しました。

ここでボトリングするウイスキーは、シングルカスクで、着色もチルフィルタリングもしない、自然なウイスキーです。現在のウイスキー業界では、チルフィルタリング、冷却濾過を施すことが主流です。しかしそのような処理をせず、フィルタリングを最小限にしてボトリングしたウイスキーを販売する、それがブラックアダーのポリシーなのです。

実は昨年、グラスゴーに自社の樽の貯蔵庫とボトリングを行う工場を持つことができました。息子のマイケルが責任を持って、そのボトリングファクトリーを管理しています。

ちょっと別の話になりますが、このブラックアダーという名前は何かご存知ですか?
BBCのコメディドラマ「ブラックアダー」をご覧になったことがある方はいるでしょうか?この主人公の苗字がブラックアダーと言います。私はスコットランドらしい名前をつけたかったのですが、マックなんとかとか、グレンなんとかではないもので何か良い名前がないかと考えていました。そこでこのドラマの一節で非常に気に入ったセリフがありました。ブラックアダー氏の助手のバルドリックが言った「ご主人様、私には狡猾な計画があるのです」という一言。それが、私がブラックアダーという名前をいいなと思った理由です。

そして私はある本を見つけました。ジョン・ブラックアダーというスコットランドの司教について書かれた本でした。彼の息子にも同じ名前のジョン・ブラックアダーという人がいましたが、2人ともお酒が全く飲めなかったようです。

そして、もうひとつ。アダーというのは毒蛇という意味があります。黒い毒蛇ですね。私は蛇も好きなんです。日本語でSnakeはヘビと言いますね。この辺で「ヘビー」なお話は終わりにして、私たちのボトルについては、息子のマイケルからお話ししましょう!ご静聴ありがとうございました。

ブラックアダー最大の特徴「ロウカスク」

こんにちは、マイケル・トゥチェックです。では私の方から、ボトルのご紹介をしていきたいと思います。あまりこういったプレゼンデーションを使うことがないのでちょっと操作に手間取るかもしれませんがご容赦ください(笑)。

先ほど父が話した通り、ブラックアダーのウイスキーは、可能な限り自然な状態でウイスキーをボトリングすることが重要です。そのために私たちがやっていることは、冷却濾過ではなく、とても目の粗いザルのようなものを使います。

大体私の背ぐらいの高さのところから、樽の中のウイスキーを一気に払い出します。その時、このザルで大まかな樽の沈殿物、木片などを取り除きます。これが私たちのフィルタリングで、こうしてボトリングしたウイスキーのシリーズを「ロウカスク」と呼んでいます。

なぜチルフィルタリングをしないかというと、樽で熟成している間に生まれる豊かな香味成分が、天然のオイルの中に溶け込んでいるからです。冷却することでこのオイルが結晶化して取り除かれる。できたウイスキーは冷たくなっても濁らないのですが、その分ウイスキー本来の味わいを失ってしまっている。チルフィルタリングでなくとももっと軽いフィルターをかける蒸留所やボトラーも多いですが、それでもやはり樽そのままの味は、いくらかはなくなってしまいます。だから私たちはこの方法で、できるだけ自然な風味のウイスキーをお届けしているのです。

テイスティングアイテムの紹介

ファーストフィルバーボン樽の魅力「レッドスネーク」

では最初にレッドスネークからご説明していきましょう。
このレッドスネークと、この後のご紹介するブラックスネークは、どちらも同じ蒸留所のウイスキーです。とても素晴らしい蒸留所なのですが、名前を明かすことはできません。

レッドスネークは通常、ファーストフィルバーボン樽で5年から6年熟成したものなのですが、今回のボトルはコニャックの樽で熟成しています。

最初にファーストフィルバーボン樽で5年、そしてブルジュロールという素晴らしいコニャックがあるのですが、その樽で4年熟成させています。「フィニッシュ」というのは3年未満の場合に「◯◯カスクフィニッシュ」というのですが、これはコニャック樽でも4年熟成しているので「フィニッシュ」はつけていません。ダブルマチュレーションということになります。

私たちは、他のボトラーがどうであるとか、うちの方が優れているとかいうことは申しません。ただ、ブラックアダーはこのやり方が良いと思い、実行している、というだけです。
どうでしょう、味わってみていただいて… みなさん気に入っていただけましたか?

シェリーの製法からインスパイアされた「ブラックスネーク」

さて次はブラックスネークです。先ほど申し上げた通り、同じ蒸留所の原酒を使っていますが、こちらはシェリー樽で熟成しています。これは父のアイデアで、とてもユニークなものです。

まずレッドスネークと同じ、優れた蒸留所の原酒3樽をシェリー樽に入れます。シェリー樽は大きいので、3樽分がぴったりおさまります。これはペドロヒメネスかオロロソのシェリー樽です。時にはアモンティリャードの樽を使うこともありますが、今回のものはペドロヒメネスですね。常に、最高品質のシェリー樽だけを使っています。

このシェリー樽に入れたウイスキーを1年間熟成させます。そして樽の2/3を払い出してボトリングします。この樽に、また同じ蒸留所の原酒を2樽分継ぎ足すのです。そしてまた1年熟成させる。これを繰り返していきます。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、シェリーのソレラシステムと同じ方法ですね。

ここでラベルを見ていただくとわかるのですが、ヴァットと書かれているのが樽の番号です。これは6番目の樽ということです。そしてその後のヴェノムというのは、払い出し回数。これは継ぎ足して熟成させて払い出すという工程6回目のボトリングということになります。つまり、6年から7年はこの工程を繰り返していることになります。常に1/3のウイスキーが樽の中に残り、味わいを保っていくということです。サワードウブレッドというパンの作り方にも似ているのですが、これもパンの生地を少し残しておいて、それを次のパンのタネとして使うというやり方です。
ヴェノムというのは、父のユーモアなのですが、蛇の毒という意味です。

私たちはボトラーであって、ここにいるアムルットや静岡蒸溜所のような、ウイスキーを造る側ではありません。私たちは樽の扱いに特化した職人です。
さまざまな蒸留所が造った原酒を購入して、自分たちの考えで樽を選び熟成しています。このブラックスネークも素晴らしいシェリーボデガ(醸造所)と契約して運んでもらっている。

アムルットなどの本当に優れた原酒であればリカスク(樽の詰め替え)をする必要はなくとてもありがたいのですが、購入した原酒の状態によってはリカスクが必要で、そのタイミングやどんな樽にするかを考え、原酒がベストな状態になるようにしています。それと同時に、ブラックアダーならではの個性あふれるシリーズということで、このブラックスネークを父が考案し、世界的にとてもご好評をいただいています。

レッドスネークとブラックスネーク、同じ蒸留所の原酒を使っていますが、全く違った個性のウイスキーができていますね。

ちなみにブラックスネークは常に樽の中身を残して新しいウイスキーを足していて、樽ごとボトリングすることはないので、「ロウカスク」でリリースすることはありません。

「ロウカスク」ボトリングの秘密

さて次はグレントファースです。
私たちはウイスキーメーカーではありませんので、蒸留所の説明はいたしません。この樽、ボトリングについて説明します。

私たちは一年に一度、全ての樽のサンプルを調べます。膨大な数の樽があるので、私が60歳くらいになったら肝臓がボロボロになっているかもしれません!

父が申し上げた通り私たちは家族経営ですので、樽のサンプルのテイスティングは父、私、そして妹のハナで行います。このテイスティングで、本当に良いと思ったもの、お客様にお出しできると思ったものだけをボトリングしていきます。

ビジネスではありますが、売上を考えて今月何本ボトリングして…という計算はありません。樽が満足できる状態でなければ製品化しないこともあります。家族なので遠慮なく意見を言い合い、ウイスキーに真剣に向き合っています。

そしてこちらはロウカスク、先ほども申し上げた、フィルタリングを最小限にしたシリーズですね。ボトルにはこのように沈殿物が入ることがありますが、これは他のボトラーではありえないことです。それほど私たちはユニークで、樽の個性を尊重するボトラーであるとお分かりいただけるかと思います。

樽が重要であるというのは、ボトリングにおいて樽のままの味わいを最重要視するということだけではなく、熟成管理においても同じです。古びた樽、くたびれた樽で熟成したウイスキーは決して良い熟成をせず、ただ天使に飲まれていってしまうだけです。時には他の樽に詰め替える必要もあるし、フィニッシュで変化を与えることも必要です。こちらはシェリーヴァットでとても良い状態で熟成したので、そのままボトリングしています。

アイラ好きのための「スモーキングアイラ」

そして最後にスモーキングアイラ。これを最後にしたのには理由があります。もうみなさんお分かりかと思いますが、その名前の通り、スモーキーなアイラウイスキーだからです。
これはスネークシリーズ同様、蒸留所名を明らかにしていません。しかしアイラ好きの方にはわかってしまうかもしれません。

こちらは非常に高い度数、60.5%でボトリングしています。私たちはフィルタリング同様に、ほとんどのウイスキーを加水する事なくリリースします。その方がフレーバーをそのまま感じていただけるからです。そしてお好きな飲み方で楽しんでいただきたいのです。ウイスキーの味わい方に正解はありません。水で割っても氷を入れても、ハイボールにしても構いません。ご自身でお好きなように楽しんでいただければ良いのです。
そのためにも、私たちは樽から出したままの度数、味わいをお届けしています。

私たちは現在創業28年、もうすぐ29年になります。非常にありがたいことに、数多くの世界の蒸留所、そして輸入販売会社と信頼関係を築けています。愛情を持って造られたウイスキーを、同じように愛情と情熱を持ってお客様にお届けできる仲間がいるのはとても嬉しい事です。

最後に、父がご挨拶を申し上げます。

ブラックアダーより、日本のファンに愛を込めて!

みなさん、改めて本日のセミナーにご参加いただきありがとうございます。
私たちは昨日静岡蒸溜所に行ってきました。昨日も今日と同じように雨が降っていて、傘をさして蒸溜所を見た時、懐かしい思い出が蘇ってきました。
まだあの場所がただの原っぱだった頃、大航さんは私をそこに連れていき、ここに蒸溜所を建てるんだといいました。あの時も雨が降っていて、2人で傘をさしていました。

それから月日が経ち、今では立派な蒸溜所でたくさんの人が働き、素晴らしいウイスキーを造っている。本当に夢のあるストーリーですよね。
これからもブラックアダーと、ガイアフローをどうぞよろしく!ありがとうございました。

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