2024年2月23日 SABAセミナーレポート#4 アスタモリス

SABAセミナーレポートの最後は、アスタモリス。この日は来日予定が急遽キャンセルとなり、オンラインでの実施となりました。テイスティングアイテムはモルトウイスキー2種にグレーンウイスキー、ラムとバラエティに富んだラインナップです!

みなさんこんにちは。アスタモリスのバート・ブラネルです。本来であれば、みなさんと同じ場所でセミナーをお届けしたいのですが、ベルギーでの外せない仕事が入ってしまったため、こちらからお送りします。大好きな日本に行く機会を逃してしまい、とても残念です!

アスタモリス誕生秘話

ではまず、私自身のこと、そしてアスタモリスというブランドについてご紹介します。

私が初めてウイスキーに出会ったのは1994年のことでした。それまではアルコールはあまり飲まなかったのですが、地元の飲食店に行った時に、バーテンダーに勧められたのがきっかけです。それは、ジャックダニエルのシングルバレルでした。「これはなんだ?」と雷に打たれたような衝撃を受けたのです。それ以来すっかりウイスキーの虜になってしまいました。
それからスコットランドを訪れ、モルトマニアックスというウイスキーの情報提供やテイスティング、コンペティションなどを行うサイトを開設して運営していました。そして2009年、初めて自身のブランドとしてボトルをリリースしたのです。

最初は1994年ですので、もうウイスキーに取り憑かれて30年になります。年もとりましたが、経験も豊富になりました(笑)。

ただのボトラーではない!?豊富なラインナップ

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、アスタモリスはインディペンデントボトラーとしてウイスキーをリリースするだけでなく、スピリッツのプロデュースもしています。

最初に造ったのはジンです。ジンメーカーの人たちとどんなジンを造るか話し合ったのですが、そこで決めたのはカクテルベースとしてではなく、そのまま楽しむジンを造るということでした。こうしてできたのが非常にユニークなNOG!ジンです。これはウイスキーの樽、モートラックの熟成に使用した樽で熟成しています。ウイスキーのフレーバーをまとった、非常に美味しいジンになりました。

そしてその樽で熟成させる前のジンもリリースすることになりました。これはソウルジンといいます。スピリッツを日本語で魂と言いますね?日本のバーシーンに向けて造ったジンで、熟成していないものがソウルジン、樽で熟成したものがNOG!ジンです。ボトルにはバッチナンバーが書いてありますので、どの樽で熟成したか、または何階目のリリースかがわかるようになっています。

そして、さらにラムもリリースしています。

ひとつはママン・ブリジッドというブレンデッド・ラムです。8年熟成のバルバドス産ラム、5年熟成のドミニカ共和国産ラム、そして3年熟成のジャマイカ産ラムです。バルバドスのラムからは甘みや濃密さ、ドミニカのラムからはスパイス感やボディ、ジャマイカのラムからは陽気なニュアンスとアクセントを感じられるようなブレンドになっています。

そしてブレンドしていないラムはラスタモリスというブランド名でリリースしています。これは非常にピュアなシングルカスクラムが中心で、カラメルなどの添加物も使わず、カスクストレングスでボトリングしています。

さらにもうひとつ。アスタモーリスというブランドで、フランス産のスピリッツをリリースしています。これまでにカルバドスなどを発売しました。もちろんこちらも無着色・無加水、ノンチルフィルタリングでのボトリングです。

さて、ではテイスティングアイテムの紹介に移りましょう。

テイスティングアイテム1 ダルユーイン

最初はダルユーインです。創業は1852年、1925年にDCL(ディスティラーズ・カンパニー・リミテッドに買収されました。スペイサイドの蒸留所です。
このような小さな蒸留所の良いところは、サプライズがあるということです。すでに名の知られたブランドのものであれば、ボトルを手に取ったときに味の想像ができる。しかし知らない蒸留所のウイスキーが美味しかったら、とても驚き、嬉しくなって、印象に残るのです。

私がとても気に入っているのは、ワクシーな個性があるということです。このようなワクシーさをもつ蒸溜所はスコットランドに3つ。クライヌリッシュ、ディーンストン、そしてこのダルユーインです。このワックスのような、なめらかな舌触り。「ワクシーなウイスキーって?」と思った時には、ダルユーインを飲んでみると良いかもしれません。

ポットスティルはランタン型。銅との接触が多く、エレガントで軽やかな酒質になります。そして木製の発酵槽に、ポーティアス社製モルトミル(粉砕機)。これは静岡蒸溜所と同じですね!

このポーティアス社のモルトミルの面白い逸話があります。ここが造るモルトミルは非常に頑丈、めったに壊れず長持ちします。しかし、その素晴らしい長所が仇となって、買い替えや修理の必要がなく、メーカーはちっとも儲かりません。その結果、倒産してしまいました。今ではこのミルの交換用部品を手に入れるのが非常に困難になっています。

テイスティングアイテム2 グレンギリー

さて次はグレンギリー(6月発売予定)ですね。2011年に蒸留し、2023年にボトリングしています。1797年と非常に古い歴史を持つ蒸留所ですが、現在は日本のビームサントリー社が所有しています。それまでの間に、なんと7回もオーナーが交代しているという、なんとも忙しい蒸留所です。

しかしその間に良いこともあり、1978年にはポットスティルが増設され、最近では素晴らしいことに、2021年にフロアモルティングの施設が新しく造られました。現在では全生産量の約20%、自社で製麦された麦芽を使用しているそうです。テイスティングされている方、いかがでしょうか?ああ、「オイシイ」という声が聞こえてきますね、嬉しいです。

こちらがグレンギリー蒸留所ですね。木製の発酵槽が見えると思います。ウイスキーの好きな方には、ステンレスタンクよりロマンティックに見えるのではないでしょうか。
ほとんどの蒸留所ではステンレスタンクを使用していますが、それは衛生的でメンテナンスがしやすいという利点があります。しかし、木製の発酵槽は、天然の乳酸菌などの良い菌が住み着いて発酵を手伝ってくれます。管理が大変ではありますが、メンテナンスを丁寧に行えば、素晴らしいウイスキーが造れることがわかっています。

ポットスティルはスワンネックで、肩のあたりにボールのような膨らみがあるのが見えますね。これは蒸気の対流が増え、しっかりと銅との接触が増え軽やかでエレガントなウイスキーが造られます。

ここに限らずですが、蒸留所は魔法がかったような場所で、ウイスキー好きにとってはディスニーランドのように訪れる価値のある、素敵な体験のできるところです。

ウイスキー自体の製造の工程は大体4日から6日。それに対して熟成は数年から数十年を要します。ウイスキー造りというのは非常にロマンのある仕事で、私にとって特に貯蔵庫を訪れるのが、仕事の中で最も好きな場面です。

テイスティングアイテム3 ノースブリティッシュ

では次のウイスキー、こちらはとてもユニークな1本です。

これはノースブリティッシュ(未発売)というグレーンウイスキーです。1885年に地元のビジネスマンたちが設立し、1887年に操業を開始しています。それ以来毎年生産量が増大していまして、現在ではスコットランド第二位のグレーン蒸留所に成長しています。

生産量が大きいからといって優れたウイスキーを造れるとは限りません。シングルモルトの蒸留所では原料にこだわったり、ゆっくりと時間をかけたりして丁寧に造ることに注力をするところが多いですね。しかしグレーンの蒸溜所はほとんどが大規模で、たくさん生産することが目的になっています。

他にもウオツカなども造っていますが、面白いのは、トウモロコシのスピリッツ製造の副産物としてアセトンも作れるような設備になっています。

私がこの樽を買った時のお話をしましょう。テイスティングをしたら、クオリティは高いものの、少し平凡な、面白みのないウイスキーだと感じました。そこで、かつてカリラを詰めていたペドロヒメネスの樽があったので、その樽に詰め替えたのです。

それによって、このノースブリティッシュは、グレーンでありながらピーテッドやシェリーのフレーバーを持った、とても個性的なウイスキーに仕上がりました。

世の中にはたくさんのノースブリティッシュのボトルがありますが、このような味わいを持ったものはないのではないかと思います。ぜひテイスティングして、そのユニークな個性を楽しんでみてください。

テイスティングアイテム4 ビエール

では最後のボトル、こちらはラム、アグリコール・ラムです。
普通のラムはモラセス、廃糖蜜から造られますが、アグリコール・ラムはサトウキビの搾り汁から造られます。

過去のラスタモリスは黒っぽいラベルでしたが、こちらは白。黒はカスクストレングスで白は加水をして52%に整え、飲みやすい度数にしたものです。ただ、どちらも着色やチルフィルタリングは行っていません。

こちらはマリー・ガラント島の、ビエール蒸留所のラムです。カリブ海に浮かぶフランス領の小さな島で、1769年にコーヒー農園を所有する会社が製糖工場を造り、その後にラムの製造を始めました。

ここの特徴は、サトウキビの品種ごとに製法を分けていることです。ウイスキーでも麦の産地や種類によって造り分けを行うことがありますが、こちらはそのラム版ですね。

ビエール蒸溜所はほとんどがホワイトラムで、熟成したダークラムはあまり造っていません。ラムの大規模蒸留所は非常に大きなスケールで製造するところが多いのですが、ここは少量生産。カリビアンラムとしては非常に素晴らしい蒸留所だと思っています。

こちらがその蒸留所ですが、面白いのことに、屋外で発酵を行っているのがわかると思います。酵母も加えることもなく、自然な発酵を経て、素晴らしいラムが造られているんですよね。

貯蔵庫も独特ですね、本当にぎゅうぎゅうに樽が詰まっています。味わってみていかがでしょうか。ウイスキー好きで普段はラムを飲まないという方にも楽しんでいただけるものだと思います。


ここまでお話をしてきましたが、オンラインではありますがご満足いただけたでしょうか?繰り返しになりすが、私は日本が大好きなので、実際にみなさんにお会いできないことが非常に残念です!
次の機会には必ず日本を訪れて、直接お話できることを願っています。どうもありがとうございました!

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