【レポート】富士山ミズナラ樽に、100%静岡大麦原酒を詰めました!さらに静岡らしいウイスキーへ

2024年11月11日、静岡県産のミズナラ材で作り上げた樽に、静岡県産大麦を100%使用した原酒を樽詰めする工程を一般公開しました。

多数のツアー参加者さまと一緒に迎えたその特別な1日を、詳細にレポートします!

夜から続いた雨が朝には上がり、山々には薄靄のかかっていたオクシズ。11時スタートのツアーには、平日にもかかわらず多くの方にお越しいただきました。

まずは蒸溜所ツアーからスタート。麦芽の粉砕から熟成まで、ウイスキーづくりの工程をじっくりご覧いただきます。

そしていよいよ樽詰め工程、通常公開していない第3貯蔵庫へ。樽詰めに先立ち、代表の中村からのご挨拶です。

「ミズナラは皆さんもご存知の、日本特有のオリエンタルな香りのするオークです。国内の蒸溜所にてミズナラ樽熟成ウイスキーがリリースされ、海外からも非常に注目を集めています。
過去に、弊社でもミズナラ樽でウイスキーを熟成させたことがあるのですが、これは持ち込みの樽で特別に行ったもので、通常は扱っていません。

ミズナラ樽は高価ですが、購入することが可能です。しかし、静岡のテロワールにこだわっている弊社では、ただのミズナラ樽ではなく、静岡県産のミズナラで樽が造れないだろうかという可能性を探っていました。

実は静岡市内の、ここからもっと山の方にミズナラの林が見つかっていたのですが、調べていくうちに現在の井川蒸溜所さんの親会社が所有する土地だということが分かりました。そちらで樽を造ることが決定したため、他の場所からミズナラが出ないか、改めて調べ直すことになりました。

その過程には、この蒸溜所の建物や発酵槽などの建材、さらに現在も直火蒸留用の薪の調達をしてくださっている、玉川きこり社の繁田さんのご尽力がありました。そしてようやく見つかったミズナラの木を、樽板用に製材してくれたのも同じく静岡市内の亀山製材所です。こちらで製材し、2年近く乾燥させたものを、宮崎の有明産業産で加工していただき、完成したものが蒸溜所に届いた、というところです。丸3年以上かかったでしょうか。そのような経緯を、繁田さん、亀山さんからもご説明いただきましょう」

株式会社玉川きこり社 代表取締役社長 繁田浩嗣氏

「静岡蒸溜所さんとは、蒸溜所の建設から始まり、薪の調達などの形で関わらせていただいています。

ミズナラは標高800m以上の山で育つため、県内では南アルプスの森林にあるのではないかと調べていました。しかし、確かに原生林があったのですが、60年以上前に伐採しすぎていたようで、今ではそこから自生した細い木がわずかにあるという状態でした。

そしてある時、富士山の方で、樽になるかもしれないというミズナラが数本出てきました。そこで、製樽をされる有明産業さんに確認しながら、木材をカットして、宮崎に送るという流れになりました。

樽材にするには、非常に細かい基準があるんですね。その基準を満たすよう切り出したり選別したりというのも、亀山さんにご協力いただきながら行いました。
ミズナラは水漏れが多く、樽に加工するのも大変な作業だったと聞いています。それでもこうして完成し、この先の未来に残せる夢のあるものができたことは、本当に良かったなと思っています」

株式会社 亀山製材所 代表取締役 亀山 大樹氏

「これまで弊社でも、主にロシアや北海道産のミズナラを家具メーカーなどに卸すことがありました。

ロシアからは現在輸入ができないので、流通はかなり減っています。産地から分かりますように、ミズナラは寒い地域の方が適しています。寒いとゆっくり育つので、その分木目が細かくなり、加工しやすくなるのです。

静岡は暖かいので、良いミズナラがないのではないかと思っていたのですが、裾野市の方の富士山のふもとの標高が高い場所からミズナラが出たということで、調べてみたら状態の良い木だったんですね。ではどこで使うかというときに、森林組合で繁田さんが樽の材料になるミズナラを探していると聞いていたことがあり、お知らせしてみました。それから話が進んで、製材まで関わらせていただきました。本当に良いご縁が重なって完成した樽ですね」

こうしてできた特別な静岡県産ミズナラ樽に詰めるのは、同じく特別な静岡県産大麦を使った原酒です。その原酒について、製造部長の大野からみなさまにご説明をいたしました。

「今回樽詰めするのは、静岡県産の大麦を100%使用し、初留蒸留機Kで蒸留した原酒です。

樽の容量250Lに対してニューメイクの量は240L、アルコール度数は63.8%です。
タンクをフォークリフトで上げて、その自重で樽へ流し込んでいきます。時間としては10分程度になります」

フォークリフトで原酒タンクを樽の上の高さまで持ち上げ、連結したホースから樽へと原酒が流れていきます。参加者の方々にも、間近で見ていただきました。100%静岡ウイスキー、熟成の第一歩が始まる記念すべき瞬間です。

そしてその樽詰めする原酒(ニューメイク)を特別にご用意。樽詰めの様子を見ながら、写真撮影や質問と同時に、通常は試飲提供できない希少な静岡大麦原酒をテイスティングしていただきました。

参加者さまからは、「完成したら購入できるのですか?」というご質問も。

中村は「間違いなく販売しますが、何年後になるかが全く分かりません。ミズナラは特に長い熟成期間が必要と言われますので… それまで気長にお待ちいただけたら」と回答しました。

この日貯蔵庫内には、樽材として使われたミズナラ材の板も用意しており、実際に触ったり香りを確かめたりすることもできました。しっかりと乾燥させてあるため、ミズナラ特有の香りは分かりづらくなっていますが、カンナで削り水で湿らせてみると、火を点ける前のお香のような繊細なアロマが感じられました。

そして樽にしっかりと栓を打ち込んで、ミズナラ樽への樽詰め、第一挺目が完成しました!

最後に、ご来場のみなさまと記念撮影。静岡蒸溜所の一大プロジェクト「100%静岡ウイスキー」のマイルストーンとなる1日に、お立ち会いいただきありがとうございました!

続いて11月13日(水)、2度目の樽詰めの公開が行われました。

この日も多数のツアーご参加者様にお越しいただきました。
玉川きこり社 繁田氏、亀山製材所 亀山氏も同席し、樽の説明や質問にご対応されました。

こちらは樽容量250Lのホグスヘッド。静岡大麦100%、薪直火蒸留機Wで蒸留した原酒を樽詰めしました。

14日は一般公開を実施せず、関係者のみで樽詰めを行いました。

最後は容量450Lのバットです。ひと回り大きいのがお分かりいただけるでしょうか?


静岡産の大麦で造られ、静岡産の樽で熟成。世界にも類を見ない究極の地元産ウイスキーは、これからオクシズの豊かな自然の中で、長い眠りの時を過ごします。その間に、静岡のテロワールはじっくりと形作られていくことでしょう。

完成はまだまだ先ですが、「100%静岡」プロジェクトは動き続けます。
今年収穫した大麦での仕込み、樽詰めも同時に進んでいますが、お隣の焼津市では、まもなく来年の収穫に向けて静岡大麦の種蒔きが始まります。すでに熟成中の静岡大麦原酒は、夏に大きく膨らんだ成果を、冷え込みの厳しくなる貯蔵庫でゆっくりと調和させています。
地元愛に満ちた多方面の方々のご協力、そして静岡蒸溜所の取り組みを楽しみにしてくださるみなさまなくしては進められないプロジェクトです。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

静岡らしい味わい、静岡だけの美味しさを目指して。
これからも静岡蒸溜所の革新的なウイスキーづくりにご注目ください!

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